今年のクラス展示は『落書き屋』。
 クラス一面、床にも壁にも天井にも模造紙を貼り付けて、中央にカラーペンを用意。黒板には『ご自由に落書きしてね♪』
 全員一致で、ラクする方向に決議した結果がコレだった。
 ……うちのクラスって。


 35.2年目文化祭:当日


 というわけで、クラス展示当番の割り当てもなく。
 私は朝から他のクラス展示を見に行っていた。

 隣の志波くんのクラスは喫茶店だったはず。
 冷やかしに行こうかな?

 と、思ったら。意外にもお店は長蛇の列……じゃなくて、黒山の人だかり。

 おやぁ?

「あの、ここのウェイターさんですか?」
「入ったら、あなたが給仕してくれるんですか??」
「いや……そういうわけじゃ」

 集まっているのは他校生を含む女の子ばかり。
 そして輪の中心には。

 蝶ネクタイを締めた、ウェイタースタイルの志波くん。
 わぁ、カッコいい!!
 なんか意外。すっごい似合ってる。

 へぇぇ、志波くんが女の子に囲まれて困ってるとこなんて初めて見た。
 志波くん、女の子の扱い苦手そうだもんなぁ……ふふふ。

 あ、視線が合った。

『助けろ』
『はいはい、了解ですっ』

 困り果てた視線で訴えてくる志波くん。
 あはは、仕方ない。

「志波くん、先生が呼んでたよ」
「わかった。すぐ行く」
「「ええ〜っ」」

 女の子の非難の声を無視して、志波くんは人だかりを掻き分けてやってきた。

 そのまま一緒に、階段踊り場まで移動。

「助かった。サンキュ」
「ふふふ、モテモテだったね、志波くん?」

 笑いながら揶揄すると、志波くん、ジト目でぎろり。

「その他大勢にモテても意味ねぇよ……」
「まぁまぁ。ウェイター姿ばっちり決まってたもん。かっこいいよ、それ」
「あのな」

 志波くんは少し赤くなって、呆れた顔して。

「突き落とすのか持ち上げるのか、どっちかにしてくれ」

 あ、あれ。
 褒めたつもりなんだけどな。
 突き落としてるような台詞ではないと思う、んだけど。

 はぁ、とため息ついて、志波くんは階段に腰掛ける。

「1時からだな」
「あ、ショー? うん、1時から。今回は密さんも藤堂さんもいるから、見ものだよ!」
「……避難経路は確保してるのか?」
「避難経路?」

 聞き返すと、志波くんはさらに呆れ顔になって。
 だめだコイツ、と言わんばかりに頭を振った。

「……海野と佐伯に相談しとく」
「よ、よろしくお願いします」

 や、やっぱり今年もそういうことになるのかな……?


 志波くんと別れたあと、私は1年生の階に下りた。
 はるひから「今年の1年の喫茶メニューはすごいで!」と聞いてたからね。
 ちょっと、興味本位で覗きに来たんだけど。

「あ、先パーイ!」

 後ろから元気な声をかけられた。
 ふりむくと、グレーのエプロンを着けた、天地くん。

「天地くん、久しぶりだね?」
「はい、お久しぶりです! 先輩、お一人ですか?」
「うん、ショーまで……あ、私手芸部のファッションショーに出るんだけど、準備まで少し時間余ってるから、ちょろちょろと、ね」
「聞いてますよ! 去年の伝説的なモデルデビュー! 僕も絶対、見に行きますから!」

 満面のエンジェルスマイルで、ぎゅっと両手でこぶしを作って。
 相変わらず可愛い天地くん。

「天地くんのクラスは、喫茶店?」
「はい。僕が吟味して厳選したレアチーズケーキが目玉なんです! あ、よかったら食べていきませんか!?」
「え? う〜ん、どうしようかな?」

 せっかくの誘いだから食べて行きたい気もするけど、そんなに時間があるわけじゃないから他も見て回りたい。
 そんなことを考えてちょっと逡巡してたら。

 天地くんの目が、スッとすわった。

「金払いの悪い先輩って、後輩からはウケ悪いんですよね……」
「え!?」
「……な〜んて! 先輩、食べに来てくれるでしょ?」

「…………」

 あの、エンジェルスマイルの、一瞬の悪魔は、何?

「先輩?」
「あ、うん。じゃ、じゃあ、いただこうかな……」
「やった! 組み合わせとしてお勧めなのは、ウバティーですよ!」
「じゃ、じゃあそれも……」

 断りきれず。私はずるずると天地くんのクラスへ。

 王子キャラは二重人格なんて法律が、この世にはあるんだろうか。


 天地くんの勧めるがままにお茶をして、財布の中身がとほほなことになった頃。
 そろそろ手芸部の部室に行こうかなと思ってたら。

 階段の踊り場で、若王子先生が呼び込みをしていた。

「そこの彼女ー、踊ろうぜー?」

 ぶ。
 い、一体いつの時代の口説き文句ですか……。

「わぁ、踊る踊る! 若サマも一緒に踊ってくれるんですかー?」
「はい、一緒にフィーバーしようぜー?」
「はーい♪」

 それでもやっぱり先生は大人気。
 はね学生を中心にぞろりと女の子に囲まれて、うまいことナンパは成功してるみたい。

 それにしても、この時代にディスコって。
 クラス展示がそう決まった時の瑛の顔。見てみたかったな。

「お嬢さん」

 ぼーっとしてたら、目の前に先生が来ていた。
 ちょ、ちょっとびっくりした。

「僕と一緒に踊ろうぜー?」
「誘われるのは悪い気がしないけど、私そんな軽い女じゃありませんから」
「やや、あっさり振られてしまいました。でも」

 ぽん、と私の頭に手を置いて、優しく撫でてくる先生。

「君の返事は正しい。そんな簡単に、男についていっちゃいけない」
「もう、子供扱いしないでくださいよ……」

 頭から先生の手をどけて、拗ねてみせる。
 先生の大きな手で髪を撫でてもらうの、大好きだったのに。
 今はもう、切なくなるだけなんだもん。

 先生はそんな私の態度に首を傾げて。

さん、ご機嫌斜めですね? ピンポンですか?」
「ブ、ブーです」
「でも、不機嫌ですよね?」

 しつこく聞いてくる先生に、私はぷいと顔を背けた。
 ああ、私。なんて可愛くないんだろう。

「……僕は」

 先生の声音が悲しそうで。
 私は驚いて先生を見た。

 声音どおりの、寂しそうな表情。

「修学旅行以来、さんの笑顔を見てない気がする」
「そんなこと、ないですよ?」
「うん、志波くんや佐伯くんや、友達といるときの君は笑顔だ。だけど」

 先生は真っ直ぐ私を見る。

「僕には笑顔を一度も見せてくれてない。違いますか?」
「ちが……います」

 言葉につまりながらも。
 それでも私は先生の言葉を否定した。

 修学旅行のあと、気持ちの整理がなかなかつかなくて。
 できるだけ若王子先生を避けて行動してた。

 ああでも。もしかして。
 そういう態度って、先生を傷つけてた?
 もしかして、じゃない。傷つけたんだ。
 そりゃそうだ。夏まではあんなに親しげにしてたのに、急によそよそしくなったら、誰だって。

 フツウにしなきゃ。
 ただでさえ先生は私に気を遣ってくれてるのに。
 これ以上煩わせちゃいけないんだ。

「すいません。本当にそんなつもりなかったんですけど。ほら私、後半クラスで先生と会う機会少ないですし」
「それだけ? 本当に?」
「そうですよー。なんなら、今ここでのスペシャル笑顔をお見せしましょうか?」
「はい」

 はい、と来たか。

 私は階段を4、5段上り、先生に背を向けた。

「先生、呼んでください」
「……さん」

「はいっ、先生!」

 元気よく振り向いて、満面の笑顔。
 小首を傾げて頬に人差し指をあてて。
 名づけて小悪魔デイジーの微笑み・エリカバージョン!!

「ぷ」
「ああっ! 先生笑いましたね!?」

 先生は口元を押さえて、おかしそうに笑い出してしまった。
 ふ、不本意。素敵な笑顔です、くらい言わせようとしたのにっ。

 笑い続ける先生に抗議しようと近くに寄ったら、先生は笑うのをやめた。
 微笑んでいるけど、やっぱり表情は寂しそう。

「そういうことにしておきます」
「……先生」

 ごめんなさい。
 そんな表情させて、ごめんなさい。
 ……好きになって、ごめんなさい。

「先生、私ショーの準備があるので、これで」
「はい、がんばってくださいね、さん」

 いたたまれなくなって、私は階段を駆け上がった。

さん」

 その背に先生の声がかかる。

「僕は、君のショーを見に行っても、いいですか?」

 階段の踊り場から見上げる先生の表情は、今まで見てきた中で一番心細そうで。

「もちろんです。絶対、見に来てくださいね?」
「よかった。最前列で応援します」

 私の返事に、心の底からほっとしたようだった。



 そして、ファッションショーは幕をあける。
 去年のこともあってか、今年の体育館は満員御礼。
 手芸部一同円陣を組んで、気合を入れた。

 ふふ。もちろん掛け声は藤堂さんがかけたんだけどね。

 1年生のタウンウェアのショーが終わって、いよいよ2年生の番。
 一度舞台は暗転し、素早く私と密さんと藤堂さんが舞台にスタンバイ。

 そして、2年生のパーティドレスのショーが始まった!

 舞台を暗転したまま、音楽が始まる。
 音楽はダンスミュージックでおなじみの『Night Of Fire』。
 音楽が始まった瞬間、観客席から大きな歓声がおきた。

 そして、Night of fireの掛け声と共に、ステージに真っ赤な照明が走る!

 そして第2イントロが始まると同時に照明は通常照明へ。
 私たちも、ウォーキングを始めた。

 中央に私。右手に藤堂さん。左手に密さん。

 舞台端ぎりぎりまで寄って、そこでポージング!

 わわ、携帯フラッシュが眩しいっ!

 一度舞台中央までもどり、今度は一人ずつ前へ。
 最初は密さんだ。

「うおお、水島さーん!!」
「きゃあーっ! 密お姉さまーっ!」

 男女入り混じった歓声。
 さ、さすが密さん。

 密さんが着ているのは、真紅のタフタで出来たプリンセスラインのドレス。
 ベアトップ型の身頃にはたっぷりシャーリングが入っていて、きゅっとウエストはしぼってある。
 スカート部分はふんわりと広がっていて、後ろにいくにつれて裾が長くなっていて、トレーン状態になってて。
 背が高くてきれいなおねえさん系の密さんには可愛い過ぎるかな?とも思ったけど。
 さすがは密さん。ばっちり着こなしていた。

 次は藤堂さん。
 あはは、藤堂さんの声援はドスの聞いたものが多いんだ。

「姉御ー!!」
「竜子ー!!」

 などと叫んでるのは主に応援部を中心とした男子だ。

 藤堂さんのドレスはこれも真紅のシャンタンで作られた、ほっそりとしたタイトなシルエットのドレス。
 ワンショルダーで、右脇から腰にかけては素肌もろ見えのレースアップ。超セクシー。
 くるぶしまでのロングスカートだけど、右脇に大きくスリットがはいっていて、藤堂さんの華麗な脚線美を惜しげもなくさらしてる。
 このドレスを藤堂さん着てくれるのかな、なんて思ってたけど。
 ドレスを見るなり「相手に不足はない」なんて、にやりとしてたっけ。

 藤堂さんが戻ってくる。
 いよいよ、私の番だ。

 私が一歩を踏み出すと、会場が揺れた。

ーっ!」
さーんっ!!」
ちゃん、可愛いぞーっ!」

 あはは、ありがと。
 営業スマイルで、私は舞台ぎりぎりまで歩く。

 私のドレスは、1年の時に組んだ彼女が作ってくれたもの。
 シルエットは密さんのとよく似てるけど、素材はシフォン。色は真紅。
 カシュクール風の身頃に、右脇でドレープをたっぷりとってあって、スカートはそこから広がる膝上丈。
 パニエを穿いてるから、この広がり具合が可愛いんだ。
 ほんと、私の相方ってデザイナーとして優秀だと思う。

 ステージ中央でポージング。

 あ、あかりとはるひ。手を振ってくれてる。
 野球部マネージャー! あはは、野球部率いて声援かけてくれてるよ。ありがとう!
 ハリーとクリスくん。もう、ライブじゃないんだから、椅子の上に立って腕振り回すの禁止!
 瑛と志波くんは最前列で座ったまま見てるけど、私の視線に気づいたのか、ぐっと二人揃って親指を突き出した。ふふ。

 そして、先生。
 言ったとおり、先生も最前列にいた。
 他の生徒と一緒になって、私に声援を送ってくれてる。
 あれ、でも……

「……ーっ」

 っ!!!

ーっ!」

 先生。

 名前、で。

 危うく、固まるところだった。
 私は予定通りのタイミングで、密さん・藤堂さんのいる舞台中央に戻る。

 そして私たちはもう一度そろって舞台最前方まで歩き、もう一度ステージの奥へ。

 音楽の終了と共に、肩にかけてたショールを一斉に投げ上げた!

 わああああああ!!

 大歓声と共に、今年の出番は終了!


さん」

 舞台袖に戻って。
 3年生のウエディングに素早く舞台転換する中、私は藤堂さんと密さん、3人で思わず抱き合った。

「きゃー! うまくいったわね! どきどきしちゃった!」
「ああ、やる前までずっとかったるいと思ってたけど、よかったよ!」
「うん! すっごく充実感あったよね!!」

 3人で飛び上がって喜びを爆発させていたら、コンコンと。
 誰かが壁を叩く音。

 振り向いた先には、あかりを始めとしたみんな。

「お疲れ様! 3人とも、すっごく素敵だったよ!」
「ありがとう、あかり。最前列で見てくれて」
「今回は席確保、大変だったけどね! ……あ、じゃなくて」

 口を押さえて、あかりはまわりを見る。

「手芸部の部長さんにはもう連絡済み。避難場所に誘導シマス!」
「え、このまま? 着替え……」
「は、後にしてください。3年生のウエディングしてる間に移動するから」

 そういうのは小野田ちゃん。
 うう、3年生のウエディング見たかったけど仕方ない。
 混乱避けるためだもんね。

「佐伯くんと志波くんがボディガードにつきます」
「ボディガード……」

 今回は密さんと藤堂さんも一緒だから必要ない気もするけどな……。

「海野さんと西本さんも、若王子先生のクラスなので、一緒に非難してもらいます。残りのメンバーと生徒会で、ショー終了後の混乱を抑えますから」
「よ、よろしくね、小野田ちゃん、氷上くん」
「任せてくれ、くん。さ、君たちはそこから化学準備室まで急いで移動してくれ。グラウンドにも生徒がいるはずだから、速やかに頼む」

 舞台袖控え室は、本来体育器具室だ。
 だからグラウンドに通じる扉がある。

 そして、1階にある化学準備室にも、グラウンドと繋がるドアがある。
 去年と同じ場所への避難だ。

「行くぞ」

 先頭は瑛。しんがりが志波くんと藤堂さんだ。

 がちゃりとドアをあけて、全員で一斉に走り出した!

 グラウンドにいた生徒たちは、突然現れた赤いドレスの集団に何事かと、ぽかん。
 みんなが呆気に取られているうちに、私たちは化学準備室にたどり着けた。

 なんか、あっさりで拍子抜け。

 と、思ったら!

「や、お疲れ様でした、みなさん」

 ビーカーコーヒーを用意していた先生の後ろ。
 化学準備室のドアの前には、いつもは部屋の中央にある先生のデスクが置かれていて。
 化学室に通じるドアの前には、小さな実験器具のキャビネットと、人体模型。

 ずりずり、という音に振り返ってぎょっとした。
 だって、瑛と志波くんが、今入ってきたグラウンドに通じるドアの前にこれまた実験器具キャビネットを移動してたんだもん。

「こ、この状況は」
「もうみんな知ってんだよ。お前たちの避難場所」

 入り口をふさいで、瑛は手近な椅子に腰掛けた。

「ここは避難場所、というよりシェルターと思え」
「はぁ……」

 そ、そんな大事になってましたか。

 先生はみんなにコーヒーを配って、椅子を勧めた。
 あかりが素早く先生の前に丸椅子を置いて、「ちゃんはここ!」なんて言うものだから。

 もう、変な気を遣わなくてもいいのに。

 私は先生と対座することになってしまった。

「お姫様みたいですね? さん」
「そ、そうですか?」

 ドレス姿で、髪を結い上げて、化粧もしてる私。
 さすがに恥ずかしくて、小さくなっていたんだけど。

「うん、とっても綺麗だ。このまま、攫ってしまいたいくらい」

 ぐっ

 志波くんがコーヒーにむせた。

「へ、変なこと言わないでくださいよ、もう……」
「変なことじゃない。事実です」
「……アリガトウゴザイマス……」

 真顔で言い切る先生。
 恥ずかしいなぁ、もう。

 ……でも、すっごく嬉しい。
 久しぶりに、喜びを押さえきれずに、笑顔がこぼれてしまった。

「あ」

 それを見た先生が、嬉しそうに声を上げた。

「笑ってくれましたね? 先生も、嬉しいです」

 ……先生。
 そっか。先生はもうオトナだから。
 コドモの笑顔が作ったものかどうかなんて、わかっちゃうんですね。

「はい、私も嬉しいです! だって、先生最前列で、私を呼んでくれましたよね?」
「え」

 素直な笑顔でやり返すと、珍しく先生は照れたような表情を浮かべた。

「や、やー、あれは……まわりの雰囲気につられて、ついあんな呼び方を」
「謝らないでくださいね。嬉しかったんだから」
「……うん」

 にこーっと笑う先生の笑顔は、子供のよう。

 なんか。どうしてかわからないけど。
 少しだけ肩が軽くなった感じ。

 あかりを見ると、私たち以上に目をキラキラさせて、喜んでた。

 うん、ごめんね、心配かけて。
 私、きっともう大丈夫だよ。

 と。

 どんどんっ

 3方向のドアが、ほぼ同時に叩かれた。

『開かないぞ? やっぱりここじゃねぇんじゃん?』
『そうだよ、教師は文化祭中は教員室待機で、準備室は閉鎖されるんだろ?』
『いや、でも去年はここに隠れてたんだ! 今日、佐伯と志波が話してるの俺聞いたし!』

 瑛と、志波くん?

 じろっと、全員に睨まれるふたり。

「(な、なんだよ。避難手伝いしてやったのに、そういう顔するのか!?)」
「(詰めが甘いっ!)」
「(そういうこと言うなら、来年からもう手伝わないからな!)」
「(瑛くん、そんなこと言って……)」
「(だ、だって、こいつらが!)」

 こそこそと声を潜めて言い合う瑛とあかり。
 藤堂さんと密さんも、無言で志波くんを攻めてるみたい。

 ふふふ。

 ふと。
 先生を見たら、先生も肩を震わせていた。

 あ。

「(先生、楽しいですね?)」

 修学旅行の時と一緒だ。
 あの時はもっともっとせまいところだったけど、こんな風にかくれんぼしてたんだもんね。

 私が先生の顔を覗き込んでそう尋ねると、先生は。

「(はい、とっても楽しいです)」

 コツンと。
 あの時のように、私と額をつきあわせてくれた。

 ……先生。

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