*ドリーム小説30話目をお読みいただく前に*

 まいどHOLYのドリーム小説をごひいきくださいまして、ありがとうございます。

 えー、今回の30話なのですが。


 今までとちょっと違うノリです。

 異様にテンションが高いです。

 キャラクターがかなりの勢いでおばかです。

 いうなればAHoooooo! な内容です。


 それでもいいと言うかたのみ、このままお読みください。

 いや、という方は次の話に飛ぶか、話がアップされてなければ他の素敵サイトさまをおまわりくださいw


 それではどうぞ。





 3日目の団体行動日はクラスの子と楽しくまわって。
 その日の夜。事件は起こった。


 30.修学旅行3日目:激闘枕投げ 前編


 就寝時間が押し迫った10時半。
 私は割り当てられた部屋で、同室の子とお土産を見せあったり他愛ないおしゃべりをしたりして盛り上がってた。

 そこへ。

「すんませーん。いますー?」
「あれ、はるひ? どうしたの?」

 こそこそとやってきたはるひ。
 私は部屋の入り口まで行って、はるひを迎えた。

「どうしたの? はるばるうちのクラスの部屋まで」

 はるひのいる前半クラスの部屋と、私の後半クラスの部屋はフロアの端と端ぐらいの距離がある。
 わざわざ尋ねてくるなんて、緊急の用事かな?

「んっふっふ〜。ちょっと用事があんねん。あー、あんな?」

 はるひはものすごくいい笑顔をして。
 すぐ近くにいた同室の子に声をかけた。

、ちょっと借りてくから。見回りきたらうまいこと言っといて?」
「いいよ! さん、ごゆっくり〜」
「ほな行こか!」
「え、ちょ、どこへ??」

 問答無用。
 はるひは私の腕をひっぱって廊下に連れ出した。

「次は志波やな!」
「え、なに、なんなの?」
「アタシが頼んでも来てくれそうもないから、アンタからも頼んでや?」
「だから、そもそもの目的はなに!」

 思わず声が大きくなって。
 はるひに口をふさがれた。

「しーっ! 教頭が見回ってるらしいねん。見つかったら廊下に正座やで? 静かにっ」
「う、うん、ごめん。で、なんなの?」
「2−B主催、枕投げ大会の選手集めや」
「まっ……くらなげ???」

 枕投げ。
 それは修学旅行の風物詩。
 一球入魂。ほとばしる情熱と駆け抜ける青春。

 ……って。

「それはバレたら恐ろしいことになるのでは」
、不参加なん?」
「まさか」

 にやりと私は微笑んで。

「参加に決まってるじゃないっ!」
「ええ返事! ほら、志波の部屋は確かここや」

 男子のフロアはエレベーターホールをはさんで反対側。
 はるひはコンコン、とドアをノックした。

 一瞬の沈黙のあと、小さな返事。

「あー、先生とちゃうねん。アタシ、2−Bの西本。開けてくれへん?」
「なんだ。誰かに用か?」

 がちゃりと開けられるドア。
 室内の男子は全員がこちらに注目してた。

 あはは、修学旅行中の女子の訪問はどきどきするよね!

 ドアを開けてくれた子は、はるひを見て、私を見て。

「うわ、さん!?」
「「「「なにーっ!!??」」」」

 どたどたと。
 部屋の全員が入り口に殺到した。

 わ、わ、わ。

「なになに!? さん、誰かに用?」
「どーぞどーぞ! キタネェ部屋だけど入って入って!」
「西本さん、グッジョブ! 大感謝!」

「あああの、えと」

 助けを求めてはるひを見るも、一歩下がってにやにやにや。
 楽しんでるっ。人の不幸を楽しんでるな、はるひ!

 と。

「おい」

 群がる男子の後ろから、低い声。

「がっつくな。がビビってんだろ」
「志波くん!」

 男子の中にいてもひょこんと大きい志波くん。
 私に食いつくように近づいていた男子を片手で引き離して。

 じろりと私を見下ろした。
 あ、あれ。今日は、不機嫌?

「お前何考えてんだ。こんな時間に、男子の部屋に来て」
「ううう、私の意志じゃなくて、はるひがぁ〜」
「……西本か」

 あ、志波くんため息ついた。
 ハリーとはるひのたくらみならもうあきらめろ。
 私たちの間では有名な格言だもんね。

「じゃ、志波借りてくで〜」
「おい!?」
「なんだよー、志波に用か〜」

 ぞろぞろと。男子は部屋に引き上げる。

 今度は志波くん、じろりとはるひを睨みつけて。

「何だ」
「枕投げ大会すんねん! 参加するやろ?」
「だりィ」

 それだけ言って、部屋に戻ろうとする志波くん。
 あ、ちょっと残念。予想はしてたけど。

 すると、はるひは私のわき腹をつついて。

「(何ボーっとしとんねん! の一言があれば、志波、来てくれるって!)」
「(う、あ、うん)」

 体育系部活所属の枕投げ。見てみたいし。
 私ははるひに協力することにした。

「し、志波くん」
「なんだ」

 面倒くさそうに振り向く志波くん。

「修学旅行中しか出来ないことだしさ、行ってみるだけ行ってみない? 先生に見つかったら正座だろうけど、楽しそうだよ」
「……は行くのか」

 うあ、完全あきれ返ってる志波くんの表情。

「う、うん。どうせなら、知ってる人が一人でも多いほうが楽しいなーなんて」
「……」

 志波くん、足を止めてこっちを向いた。
 よし、もう一押し!
 小悪魔デイジー作戦だ!

 両手を合わせて、小首を傾げて、上目遣いで、デイジー様お得意の一言。

「だめ?」
「……………………っ」

 志波くんの表情がひきつった。

「わ、わかった……」
「やった! ありがとう、志波くん!」
「あかりもも、悪魔やな……」

 なぜか口と鼻を押さえてうつむく志波くんと、真顔でつぶやくはるひ。

 あの、私はデイジー様の真似をしてるだけですから。


 はるひと志波くんと私。
 教頭先生の気配に気をつけながら、私たちは2−B男子の部屋の前まで来た。

 どたんどたん。ぎゃーぎゃー。

「なんか、もう始まってる?」
「まだやろ? だって、アタシがつれてくるから待っててな! って宣言したら、全員声揃えて返事してん」

 はるひはコンコンとノックする。
 一瞬で静まり返る室内。

 やがて。

「はい、どなたですか?」

 あ、瑛の声だ。

「アタシや。みんな揃っとる?」

 ドアが開く。
 私たちは素早く室内に滑り込み、瑛がドアに鍵をかけた。

 う、わ!
 部屋の中は叱れた布団のシーツがあちらこちらめくれあがって、もうすでに惨劇のあとってカンジ。

「来たな、志波、
「うん、来ちゃった!」
「お前ら、元気だな……」

 にやりと笑う瑛。その横にはあかりがいる。

「あかりも来てたんだ」
「うん。どきどきするけど、好奇心に負けちゃった!」
「だよねー!?」

 きゃいきゃいと二人で喜んでいると。

「や、さん。手に汗握る戦いの舞台へようこそ」
「へ? ……わ、若王子先生!? なんでここに!?」
「青春ですから」

 り、理由になってません。
 っていうか。止める立場の教師が率先して参加って。

 みんなが体操着に対して、若王子先生も白ジャージ。
 気合、入ってますね……

「大丈夫ですよ、さん」

 先生が私の肩に手を置いて、優しく微笑む。
 とくんと。跳ね上がる心臓。

「心配しないで。先生は必ず勝ちます。さんの唇は、誰にも渡しません」
「は、はいぃぃぃ!?」

 ななななななな。

 ナニソレ!?

「はるひ!?」
「あー、言うの忘れとった。優勝者には、学園アイドルから祝福のキスが与えられますーて」
「「なにーっ!?」」

 その情報を知らなかったのは私と志波くんだけだったみたい。
 みんな、うぉぉぉぉと盛り上がってる。
 って。

くん! 案ずることはない!」
「ひ、氷上くん!? に、小野田ちゃん!」

 毅然とした声を出して立ち上がったのは、別クラスのはずの氷上くんに、それに追随する小野田ちゃん。

「ふ、ふたりも来てたの?」
「はい。あまりにこの部屋がうるさかったので氷上くんと一緒に注意に来たら、こんなふしだらなことを計画してたものですから」
「かならず僕たちが優勝する。僕はくんの、き、キスはのぞまないがっ、生徒会役員として、不純異性交遊を断固として阻止してみせる!」
「き、期待してます」

 意外。
 でも、氷上くんはともかくとして。
 小野田ちゃん。結構目がキラキラしてる。ふふ。

ちゃーん!」
「あ、クリスくんも参加するの?」
「もっちろんやーん! ぜーったい優勝して、ちゃんとちゅーすんねんなー?」
「い、やあ、それは……あ! 密さん! 交代してよ!」

 抱きーっ♪ と抱きついてきたクリスくんに、その後ろでクスクス笑っている密さん。

「キスの祝福なら、お嫁さんにしたい候補ナンバーワンの密さんのほうが適任だよ!」
「うふふ、ごめんなさい、さん。実は最初はそうだったんだけど。私がさんのほうが盛り上がるわよって、提案したの」
「そ、そんなぁ……」
「大丈夫、ちゃ〜んと勝ってあげるから」

 つん、と私の額をこづく密さん。
 う、タッチの差で賞品にされたんだぁ……。

「はぁ、なんでアタシがこんなことに巻き込まれなきゃならないんだ……」
「おいクリス。いい加減離れろ」

 ため息つきつつ、本気でうざったそうにしている藤堂さんと、私からクリスくんを強引に引き離す志波くん。
 私は、がしっ! と藤堂さんの手を掴んだ。

「藤堂さん! 志波くんと組んで、優勝して!」
「は、はぁ?」
「藤堂さんと志波くんが組んだら絶対絶対優勝できるよ! 私、藤堂さんになら唇奪われてもいいっ!」
「アンタねぇ。アタシはごめんだよ。まぁ、やるからには手は抜かないけど。それは志波にでもやんな」
「な!?」
「ぐすん、藤堂さんツレナイ。志波くん、絶対勝ってね?」
「……………………………あぁ」

 また口元を押さえてうつむく志波くん。
 藤堂さんは「あーかったるい」と言いながらも体をほぐしてる。
 ううう、期待してますっ。

 その片隅に、にやにや笑ってる、瑛。

「……おもしろがってるでしょ」
「別にお前はどーでもいいけど。勝負ごとには負けない主義だから、オレ」
「ふんだ。友達がいのない」
ちゃん、私、がんばるからね」
「ありがと、あかり。応援してるね?」
「うん! この日のために、必殺技も開発してきたんだから」

 うん、期待しないで見てるね、あかり。

 そして私はなぜか主催者を名乗ってるはるひとハリーのそばに座らされた。

「うらみます、はるひさん、ハリーさん」
「逆恨みはあかんよ、。修学旅行はみんなで楽しく、や!」
「そうだぞ、! オレ様発案、激闘枕投げ勝ち抜き戦! 盛り上がるぞー!」

「あのー西本さん、針谷くん」

 ぶちぶち文句を言う私を尻目に。
 先生が右手を上げながらやってきた。

「先生は、誰と組めばいいんですか?」
「……若ちゃん、ほんまに参戦する気やったんか。審判やってもらお思っとったんやけど」
「やや、先生、試合には出れないんですか? がっかりです」

 しょぼーんと肩を落とす先生。
 本当に落ち込んでるみたい。あーあ。

 ……うう、しょうがない。

「ねぇ、はるひ。私も黙って優勝賞品にされるのやだから、勝ち抜き戦の優勝者と直接対決して、私が負けたら賞品になるよ。私、若王子先生と組む!」
「ややっ、さん、ナイス提案です!」
「あ、いいんちゃう? 優勝決定戦やな?」
「よしよし、決まりだな? んじゃあ、二人はそこで座って見てろ」

 はいはいっ、と。
 あっさり機嫌を直して、先生は私の隣に座る。

さん、がんばりましょう!」

 そう言って、私に右手を差し出す。

「はい! 絶対勝ちましょうね!」

 私も、その手を強く握り返した。



「第1回戦! 2−B選抜AチームVS他クラス選抜クリス・水島チーム!」

 ハリーが高らかに宣言すると、2−Bの男の子二人組みと、クリスくん、密さんが立ち上がった。

「制限時間は3分、終了時に陣地内の枕が少ないほうが勝ち! もしくは、相手をK.Oさせたら勝ちだかんな!」
「K.O!?」

 そ、そんな危険だったっけ!? 枕投げって??

「ではレディー……ゴーッ!」
「いくぞ! 女子と外人の混成チームになんか負けられねー!」
「おうっ! 水島さんには悪いけど、クリスをやっちまえ! 変な外人のくせして、当然のように水島さんと組みやがって!」
「ひ、ひどいわ〜、変な外人て……」

 2つ同時に投げられた枕をひょひょいっとよけて、悲しそうな顔をするクリスくん。

「ニホンの心は和の心のはずやのに〜……ショックや〜」

 といいながら。
 ふつふつとクリスくんの背後から黒いオーラが立ち上る。

 って。え?

「なななな、なにあれ!?」
「おーっと出るか!? 伝統の枕投げ戦、個人奥義!」

 ハリーの実況が盛り上がる。
 お、奥義!?

 その時。

 キュピーン! と、クリスくんの両目が光った。

「クリストファー=ウェザーフィールド懇親の技……クリス・ザ・バイリンガル!」

 クリスくんが叫ぶと同時に、その背後に赤黒い炎が宿る!
 ええええええ!?

「いてまうぞゴルァ、上等じゃかかってこんかァ!!!」


 ぴきーんと。


 その場の空気が凍った。

 2−B選抜Aチームは手にした枕をぽとりと落とし。
 両手を挙げて。

「降参」

「く、クリスと水島チームの勝ち……」
「え、ホンマ? やったぁ、密ちゃん、勝ったでー♪」
「やったわね、クリスくん」

 にこやかに盛り上がってるのは、クリスくんと密さんだけ。

 こ、これが。

さん、これがはね学伝統の激闘枕投げ戦です。まさに青春、でしょう?」
「は、はい。青春というか、あの、スゴイ……ですね」
「この日のために、みんな部活やバイトの先輩から、各奥義を伝授されてくるんです。脈々と受け継がれる、伝統戦です」

 早慶戦とは違う意味で、伝統的なんですね、コレ。


 そんなこんなでそれぞれの1回戦が終了。

「えーと、続いて2回戦。志波・藤堂組とクリス・水島組〜」

 なんかもうすでに1回戦でお腹いっぱいなんですが。
 2−B選抜チームは全滅して、他クラスからの参加チームが残っていた。
 ……あ、瑛とあかりのチームは2−B選抜に入るのかな。

「ええ〜、志波くんとやるん〜? 手加減してな〜?」
「クリス、勝負に手加減は無しだ。奥義を1回戦で披露したのは、早まったな」
「うう、志波くんコワイ〜」

 比較的和やかに向かい合ってる志波くんとクリスくんに対して。

「待ってたよ……この時を」
「いやだ、竜子ちゃんたら怖い」

 にこやかに微笑んでる二人。
 でも、背後のオーラが。背後のオーラが!

「藤堂さんが竜で、水島さんが虎ですねぇ」
「先生にも見えますか!? そうですよね!? ね!?」

 その迫力といったら。
 私は思わず若王子先生の右腕にしがみついてしまった。

 おや、とつぶやいて、先生は。

「大丈夫。枕が飛んできても、ちゃんと先生が守ってあげる」
「え……あ!? す、すいませんっ……」

 慌てて手を離すけど。

 微笑む若王子先生の背後からははるひとハリーのにやにや笑顔。
 うう、うかつ……。

「よーし、そんじゃ行くぞ。レディー、ゴーっ!!」

 ハリーの掛け声と共に、枕をひっつかむ藤堂さんと密さん!

「手加減しないよ、水島ァ! タイマン奥義!」
「いいわ、竜子。受けてあげましょう! タイマン奥義!」

「「あ」」

 志波くんとクリスくんが、お互いのパートナーを見て、一瞬で判断した。

「お前らっ! 全員布団かぶって避難しろ!」
「早う早う! 巻きこまれるでー!」

「「「「「えええええ!!??」」」」」

 言うが早いか、志波くんとクリスくんは近くの子に布団をかぶせはじめる。
 瑛はあかりの手を引いてすぐ近くの押入れに。
 はるひとハリーもすばやく布団にもぐりこみ。

 私は。

 若王子先生がひっぱってきた布団を、一緒に頭からかぶった。

 その瞬間!

 ゴォォォォォ!!!

 形容しがたい暴風が室内を荒れ狂う!

「わわわわわ!」
「こ、これは。先生、こんなにすごい奥義は初めてです!」
「っていうか、これ人間技じゃないですよね!?」

 もう先生と密着してるとか、肩抱かれてるとか、そんなのどうでもいい。
 暴風に布団が飛ばされないようにしっかり掴んで、ことが済むのをじっと待って。

 しばらくして。

 轟音がやんだので布団をめくって、様子をのぞいてみれば。

 なんか、すごく清清しい表情の藤堂さんと密さん。

「……腕をあげたわね、竜子。正直、ここまでやるとは思わなかったわ」
「アンタもね。さすが密姐さん、ってことか」
「うふふ」
「フッ」

「お前ら、どっちももう試合すんな。人死にが出る」

 ハリーのつっこみに、その他一同が全員頷いた。



「えー……気を取り直してっ。結果的に勝ち抜き戦決勝戦! 佐伯・あかりチームと、氷上・小野田チームやなっ! 両者、前へ!」

 はるひが仕切り直して、会場を全員で整えて。

 私の横には志波くんとクリスくんがやってきた。

「悪ィ。勝てなかった」
「せっかくちゃんとちゅーできる思ったんに、残念や〜」
「お疲れ様、志波くん、クリスくん。ね、この試合はどっちが勝つかな」

 二人に尋ねると、うーんと短く唸って。

「格くんと千代美ちゃんかなぁ? 二人とも、生徒会奥義を伝授してもらっとるんやろ?」
「ああ。それに引き換え佐伯も海野も帰宅部だからな。奥義を持ってるか否かの差はでかい」

 うん、賛成。
 普通の勝負なら、運動神経のいい瑛やあかりが勝ちそうなものだけど。
 この、人外魔境の戦いじゃあ。

「海野さん、手加減は一切しません。規律を守らない生徒には、罰を受けてもらいます」
「千代美ちゃん、こっちだって負けないよっ!」
「佐伯くん。優等生の君までがこんな馬鹿げたことに参加するとは……失望したよ!」
「ふっ……どんなことであれ、勝負には絶対勝つ。それが、俺流!」

 ばちばちばち。

 おお、さっきと違って健全な火花が飛んでる。

「じゃあ行くぞ! レディー、ゴーっ!!」

 ハリーの号令に、戦いの火蓋が切って落とされた!

「いくぞ、小野田くん! 先手必勝、短期決戦だ!」
「はいっ、氷上くん! 生徒会奥義、合体技!」
「なっ、なにぃぃ!?」

 枕を投げようとしていた瑛とあかりの動きが止まる。
 そこへ、氷上くんと小野田ちゃんの必殺技が炸裂した!

「生徒総会必殺答弁!」
「風紀委員決め台詞、廊下は走っちゃだめですよー!!!」

 うげげげげ!

 氷上くんの相槌を打てないノンストップ演説に、小野田ちゃんのぎくっとするような注意の叫び!
 こ、これはっ……
 戦意喪失に効果覿面だっ……!

「う……エゲツねぇ……」
「ひゃあ〜、僕、もうだめや〜……」

 あの志波くんも精神苦痛に顔をゆがめ、クリスくんなんかはもうK.O寸前。

「くっ、油断したかっ……」

 瑛も、がくんと膝をついた。
 そ、そんな!

 と思ったら!

「がんばって、瑛くん! 私がなんとかするから! 姫子先輩直伝のっ、カメリヤ倶楽部奥義!」
「「えええええ!?」」

 あかりの叫びに、私と若王子先生の声がハモった。
 か、カメリヤ倶楽部の奥義って、あかり、いつの間に!?

「夜更かしは乙女の大敵! 急いでオネムよ、デイジー、ぷんぷん!」

 ぷんぷんのところで、両手のこぶしを頭にこつんこつんとぶつけるあかり。
 あ、あの、それって。

「くっ……まさかっ、海野くんが奥義を持ってるとはっ……」
「お見事です、海野さん……も、もうだめ……」

 ぱたり、ぱたりと。
 奥義を持ってないはずのあかりが意表ついての発動だったため、氷上くんと小野田ちゃんはもろにくらったみたい。
 二人とも、その場にばたんきゅー。

「勝者、佐伯・海野チーム!」
「やった! 瑛くん、勝ったよ!」
「よくやった、あかり!」

 わーっ! と二人抱き合って喜びを爆発させて。
 でもすぐに瑛が気づいて、あかりを乱暴に引き剥がした。

 ああもう。このヘタレっ。

「ま、まぁお前にしてはよくやった。褒めてやる」
「むぅ、あんまり褒められてる気がしないよ、瑛くん」
「贅沢言うな」

 ぽすんと。
 あかりの頭に軽くチョップする瑛。
 ふふ。

「さて、待ちくたびれました」

 ゆっくりと。
 隣の若王子先生が立ち上がる。

「さぁさん。僕たちの出番です」
「は、はい」

 差し出された手を掴んで、私も立ち上がった。

 そうだ、いよいよ優勝決定戦だ。

「佐伯くん、さんの唇は絶対に渡しません」
「若王子先生、別にさんの唇はいりませんけど。勝負には負けませんから」
「あかり、お手柔らかにね?」
ちゃんも、楽しもうね!」

 握手して健闘を誓う私とあかりに対して、目に見えるほど火花を散らしている先生と瑛。
 ところで先生って、枕投げ本当に大丈夫なのかなぁ……。
 陸上部顧問の肩書きに、泥塗る結果にならなければいいけど。

「さぁて、学園アイドル・の唇は一体誰のものに!? 気になる続きは、後編へ! チェキ!」
「……はるひ、誰に言ってんの?」

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