入学式の日は、とっても綺麗に空が澄み渡っていた。
1.羽ヶ崎学園 入学式
学校から海が見える羽ヶ崎学園高等部1年生。
今日からこれが私の肩書きだ。
桜が咲き誇るはばたき市と違って、まだ日によっては雪も降る北海道から単身上京してきた私。
ほんの一ヶ月前の忌まわしい出来事なんて嘘のように学び舎は温かく、新入生たちは笑顔だ。
私もあんな表情できてるかな?
なんてぼんやり思いながら、入学式後に教室に向かって歩いていたら。
…私、道に迷った?
手の中の校内見取り図に示されている1−Bの教室はどこまでいっても見当たらない。
気づけはまわりも人はまばら。
うっそぉー……
「あ、なぁなぁ、もしかしてアンタも道に迷ってるんとちゃう?」
入学式のあと、教室にたどりつけなかった新入生がいるらしい。
そんな噂が立つ学校を想像して青くなってた私に、背後から声がかかった。
元気ではきはきとした、すぐにわかる関西なまり。
振り向くと、そこには二人の女の子がいた。
片方は目をらんらんと輝かせて、今にも私とおしゃべりしたそうに身を乗り出している女の子。
きっと、今声をかけてくれたのはこの子じゃないかな?
そしてその隣に、きょとんとした顔の、ボブカットの女の子。
「そうやろ? ほら、アンタのお仲間やん!」
関西弁の女の子は隣のボブカットの女の子の肩をぽんぽんと叩きながら、私の顔を覗き込んだ。
「アンタも見ない顔やな〜。高等部からの編入組?」
「あ、う、うん。私、。北海道から来たの」
「うわー、そない遠いところから! あ、あたし西本はるひ。んで、こっちがー…」
ぽんぽんと言葉が飛び出る西本さんが、ボブカットの女の子の肩を叩く。
すると彼女はにっこり笑って自己紹介してくれた。
「初めまして、さん。私は海野あかり。私も高等部からの編入なの」
「そうなんだ! よろしくね」
中高持ち上がりの私学だから、編入組は少ないと思ってたんだけど、いきなり同じよしみの子と知り合えてラッキー!!
「なぁなぁ、、って呼んでええやろ? あたしのこともはるひって呼び捨てで呼んで!」
「うん、いいよ」
「そんで、こんなところでどうしてん? あかりと同じで教室ほんまにわからんの?」
「あ、うん、まぁ…」
西本さん…はるひは屈託なく図星をついてくる。
私があいまいに笑いながら答えると、「やーっぱり!」と歯を見せて笑った。
「あたしらも今から教室行くとこやから、も一緒に行こ! 一年の教室はワンフロア横並びだから」
「うん、連れてってくれる?」
「さんは何組になったの?」
どんと頼もしく胸を叩くはるひの横で、海野さんが私の校内案内図を覗き込んできた。
校内案内図には自分のクラスに印がついてるから、自分が何組かは一目瞭然だ。
「あ、1−B! 私とおんなじ!」
「え、ほんと?」
「えぇ〜、あんたらそろって同じクラスなんてずるいわ〜。あたしだけ違うやん」
そういうはるひだけど、聞けば隣のクラスだというからきっと体育なんかは合同なんだろうな。
そのとき、やわらかいチャイムの音が鳴り響いた。
やばっ! とはるひが急に駆け出す。
「ほら急がんと! 先生きてまうわ!」
それはヤバイ!
私と海野さんも、あわててはるひのあとを走って追いかけた。
その後。私と海野さんはもう一度はるひから羨ましがられることになる。
「えぇ〜!! 1−Bって、若ちゃんのクラスやん!」
その若ちゃんという人物(恐らく先生なんだろうけど)に、私も海野さんも深く深く関わっていくことになるのは、まだ誰も知らない。
羽ヶ崎学園1日目。
私の高校生活、いいことありそう!
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