「お、一番乗りか?」
隣の部屋の飾り棚の中に隠されていたプレゼントを見つけてコタツの部屋に戻ると、まだ誰も戻って来ていなかった。
「片付けでもしながら待つか」
ある程度食器をまとめただけのコタツの上でも拭きながら。
オレはゆっくりとコタツにもぐる。
が。
もぎゅ
「ん?」
足の裏に妙な感触。なんだ?
「んん?」
コタツをめくって確かめてみれば。
「……」
「……」
と、目が合った。
「うぉわっ!?」
「顔踏まれた〜」
「あ、わ、悪ィ!」
驚いて飛びのけば、コタツの下からのたのたとが這い出てきた。
クリスマスプレゼント 〜ジャッカル編〜
「だ、大丈夫か?」
「うん、平気。あはは、ごめんね驚かせて」
気を取り直して並んでコタツに足を突っ込むオレと。
照れ臭そうに頭を掻くの手には、小さな紙袋が握られていた。
そうか、コタツに潜ってたってことは、そこにあったプレゼントを見つけたってことだよな。
「布団めくってみたらコタツの中央でこれ見つけたの。手伸ばしても届かなかったから潜っちゃった」
「そうだろうな。ソレ、オレが隠したプレゼントだぜ」
「え、ジャッカルの? じゃあきっと普通のプレゼントだよね?」
「普通?」
「普通じゃないのが真田とか真田とか真田とか」
「……なるほどな」
最近毒を吐くようになってきたのは、幸村の影響か?
はそんなことを言いながらも、にこにこと笑顔は絶やさずに、手にした包みをくるくるとひっくり返す。
「ね、開けてみていい?」
「ああ。気に入ってくれるといいけどな」
きらきらと目を輝かせながら、は包みを解いていく。
といっても、飾りっ気のないクラフト紙の包みをテープで1箇所とめているだけだから、そこさえはがせば中身はすぐに取り出せるんだけどな。
中から出てきたソレを、は物珍しそうに持ち上げる。
「なんだろ、ラリエット? あ、マリア様だ」
「エスカプラーリオっていうブラジルじゃ一般的なお守りだ」
「あ、もしかしてジャッカルの鞄にいっつも入ってるのと同じヤツ? 見たことあると思ったんだ」
「そうか、オレのを見たこと……」
……ん?
「おい、ちょっと待てよ。なんでオレの鞄の中身なんてが知ってんだ?」
「前に丸井が荒らしてるときに見たの」
「ああそうか……ってオイ! それは見てないで止めろよ!」
「ジャッカルってほんとノリツッコミうまいよねぇ」
いや、そこは感心するとこじゃなくて!
つーかオレのツッコミが上達したのはブン太と赤也のせいだろ!
って、に言ってもな……。
前に真田だったか柳だったか、と問答するのはのれんに腕押しだって言ってたけどホントだな。
はあぁ。
オレは大きくため息をついて肩を落とす。
「でもすごく綺麗。大事にするね。ありがとジャッカル!」
「あ、ああ。そうしてくれ」
まぁ、ウチの部で唯一の癒し系であることは確かだよな。
笑顔で素直に感謝されるなんてこと、テニス部の中じゃまずないからな。
本当に大事そうにエスカプラーリオを包みなおすを見ながら、オレもさっき見つけたプレゼントをコタツの上においた。
青い不織布にくるまれた、厚みはあるものの柔らかいもの。
誰のプレゼントなんだろうな。
「あれ?」
すると、エスカプラーリオを仕舞い終えたが首を傾げながら、オレが取り出したプレゼントに視線を落とす。
「ん? どうした?」
「それ私が隠したプレゼントだよ」
「そうか、のか。ははっ、じゃあ普通のプレゼントなんだな?」
さっきが言ったことをそのまま返す、と。
急にの目がきらっきらに輝き始め、頬まで紅潮させて、
「良かった〜! ジャッカルに当たったんだ!」
「え? お、おい!?」
言うが早いか、オレの了承もとらずにはそのプレゼントの包装を手早く解いていく。
呆気にとられているうちに、中身を取り出しただが……なんだ? 白い、もこもこした、
「えいっ」
「うお!?」
ソレが一体何なのかを考える暇すらくれずに、はいきなりソレをオレの頭に被せた。
って、なんなんだよ!?
「な、なんだ?」
「よかった、ぴったり! なんかもう真冬に突入してからさ、登下校中寒そうなんだもんジャッカルって」
「は? あ、これニット帽か?」
「そうそう!」
どこから取り出したのか手鏡をオレにつきつける。
その中には、オレの褐色の肌が余計に際立つ、雪のように真っ白な毛糸の帽子をかぶった、というかかぶせられたオレが写っていた。
で、その鏡の横には心底嬉しそうな笑顔を浮かべたが、帽子と同じ色のマフラーを手にしていた。
「立海は指定マフラーだからこっちはオマケみたいなものだけど。ね、温かい?」
「いや、そりゃ温けぇけど。……もしかしてこれ、の手編みか?」
「うん!」
すぽ、と指でつまんで帽子を頭から引っこ抜く。そしてそれを手の上で改めて見れば、確かに編み目が少し不揃いなところもある。
「作るの大変だっただろ?」
「うん、ちょこっと肩こりになっちゃった。最初は誰に当たってもいいかなって思ってたんだけどね。でも一番あったまってくれそうな人に当たると嬉しいもんだね」
「あー……そ、そうか」
微妙に喜び損ねる言葉な気がするのは気のせいか?
とはいえ、この年末の忙しい時期にわざわざ手編みのプレゼントを容易してくれたことは素直に嬉しいもんだよな。
「サンキュ。早速明日の練習から使わせてもらうぜ」
「うん、使って使って!」
かぽ、と再びニット帽をかぶって、ついでにマフラーも巻きつけて振り向けば。
はにこにこと人好きのする笑顔を浮かべながら、こくんと大きく頷いた。
だが翌日の練習日。
「うかつでしたね、桑原くん……」
「たわけが……どうなるかくらい想像つくだろうが」
「いーじゃん、おもしろそうだし」
「プリッ」
コートの隅でこっちを哀れみの視線で見ている真田たち。
そこからだいぶ離れて、立海テニス部専用コートには。
「ふふふ、似合ってるよジャッカル。いいね、さんの手編み! 練習も気合い入るね!」
「いやっ! ちょ、ちょっと待てよ幸村っ!」
「しかしジャッカルに白は似合わないな。ふむ、赤也あたりに赤く染めてもらうというのはどうだ?」
「なんでだよ!?」
審判席で腕を組みながら仁王立ちになっている幸村と柳が好き勝手言って、ネットをはさんだ相手コートにはラケットを構えた赤也が。
赤也はというと「すんませんすんませんオレマジ逆らえないんスすんません恨まないでくださいよ」と全身で訴えていて……って。
「ちょ、ちょっと待て! おかしいだろこの対戦はっ!!」
「うるさいよジャッカル。それじゃあ年忘れザ・ベスト・オブ・ワンセット・マッチー」
「って話聞けって!」
「サービス赤也。赤也、ジャッカルがナックルサーブの練習台になってくれるそうだから遠慮せずに思い切りいけ」
「う、ういーッス……」
「ういーッスじゃねぇぇぇ!!!」
「その次はオレとやろうね、ジャッカル!」
「その後にオレも相手願いたいものだな」
「その日、立海大テニス部に新たな墓標が刻まれたのだった……」
「綺麗にまとめようとしてんじゃねーよ、ブン太ーっ!!!」
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