「あった!」
私が誰かのプレゼントを見つけて部屋に戻ってきたのとほぼ同時に、マガジンラックから何かを抜き取って、それを嬉しそうに高々と掲げるさんの笑顔が見えた。
「おや、さんが見つけてくださったんですね」
「これ、柳生のプレゼント?」
「ええ。見つけてくださってありがとうございます」
微笑みかければ、さんもはにかんだ笑顔を見せてくれた。
クリスマスプレゼント 〜柳生編〜
私とさん以外はまだ戻って来ていない。
さんは素早くコタツに戻り、手に入れたプレゼントを電気にすかしていた。
小さな両手に包まれているのは、確かに私が隠した小さな封筒。
「なんだろう。何かのチケット?」
「よろしければ開けてみてください。気に入ってくださるといいのですが」
「いいの?」
「ええもちろん」
さんから二人分あけて私も丸いコタツにもぐる。
赤いリボンが巻かれた封筒を、さんは嬉しそうに解いていく。
そして封筒を開けて、中のチケットを取り出した。
その瞬間、彼女の目がまん丸に見開かれ、次の瞬間にはきらきらと輝かせ、頬まで紅潮させて。
「すごいっ! オリエンタル急行殺人事件のプレミア試写会のチケットだ! これ、お正月映画のアレだよね?」
「ええ、原作に非常に忠実に作られたと評判の高いあの映画です」
「え、でもこれ柳生は行かないの? アガサ=クリスティ好きじゃなかった?」
「はい。ですが、残念ながら上映日に予定が入ってしまいまして」
「ええ〜! それは残念だ……」
まるで自分のことのように意気消沈してしまうさん。
その仕草が愛らしくて、つい笑みがこぼれてしまう。
「ミステリーに興味のあるさんに見つけてもらえてよかった。切原くんあたりが見つけてしまっても、宝の持ち腐れだったでしょうからね」
「あはは、ちょっと可哀想だけど言えてるかも」
くすくすと笑ったあと、さんは大事に大事にチケットを封筒にしまう。
「柳生、ありがと!」
「どういたしまして。……さて、私も見つけたプレゼントを開けてみましょうか」
さきほど隣の部屋の座布団の下から見つけた白い包み。赤に金の縁取りがされたリボンがかけられている。
すると、私がその包みをコタツの上に乗せた途端、さんが「あ」と声を上げた。
「なにか?」
「それ、私が隠したプレゼントだよ」
「さんが? そうでしたか。一体何を包んでくださったんですか?」
「へへ〜。それは開けてのお楽しみっ」
にこにことはにかみながら、さんは包みを開けるのを促す。
彼女がプレゼントに選んだのは一体なんなのか、いくばくかの期待を持ちながら、私は包みを解いた。
「これは……」
出てきたのは二つにたたまれたカーキのスエード。その周りを立海のユニフォームのような芥子色のパイピングが施されている。
広げて見てようやく、それが文庫本サイズのブックカバーだとわかった。
「意外とみんな本読んでるみたいだからさ。こういうのだったらハズレないかな、って思って」
「ええ、非常にありがたいですね。色味も派手ではなくとてもいい」
手に持ってしげしげと眺める。内側には立海のエンブレムも縫い付けられていた。
「さんのお手製ですね?」
「あはは……あんまり細かいところは見ないでね」
「いえいえ、大変結構な仕上がりですよ。スエードは縫うのも大変だったでしょう」
クリスマスに心を込めた手作りのプレゼントを用意する心根の美しさに、私は素直に感動していた。
手に持って見れば紙のカバーのようにすべることもなく、電車の中での読書にちょうどよさそうだ。
「ありがとうございます。大切に使わせていただきますね」
「うん。でもね」
「なんでしょう?」
傷をつけないよう丁寧に包装紙に包みなおしていると、さんが首を小さく傾げた。
「柳生って文庫本読むっけ?」
「そうですね……私は発売日にすぐ本を買ってしまいますから」
さんの言うとおり、私の本棚にはハードカバーの本ばかりが並んでいて、文庫本はほとんどない。
確かにこのブックカバーをかぶせられる本は持っていないのですが、そんなことを告げてさんをがっかりさせるのは忍びない。
……ふむ。
「確かさんは文庫本をメインを読んでいましたね」
「うん。あはは、私お小遣い少ないから」
「もしよろしければ、さんのオススメの本をお借りしたいのですが」
「私の持ってる本?」
真っ直ぐに彼女の目を捉えて頼めば、さんは首を反対に傾げて。
「いいよ? でもなにがいいかなあ。いろんなジャンルがあるんだけど」
「でしたら、今度さんの部屋に招待していただけないでしょうか」
「あ、それなら柳生が好きなの選べるもんね。いつでもいいよ!」
「ありがとうございます」
微笑みで感謝を示せば、さんも嬉しそうにはにかんだ。
と、その背後、この部屋の入り口付近でトーテムポールになっている丸井くんと桑原くんに気づく。
「(さすがだぜ柳生……!)」
「(話の進め方が強引なのに紳士的だ……!)」
「オホン!」
「あれ、風邪?」
「いえ、お気遣いなく」
そこ、余計なことは言わないように。
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