がテレビ台の前で、ぺたんと膝をついて座っとる。
 手には人の顔ほどの大きさのヒヨコのぬいぐるみ。

「???」

 首を傾げながらがヒヨコの腹を押すと、

「ピヨッ」
「!」

 目をぱちぱちさせて、もう一度腹を押す。

「ピヨッ」
「あはは」

 さもおかしそうに笑いながら、何度もヒヨコの腹を押す。

「仁王みたい!」
「オレはそんなに可愛いかのう?」
「わっ」

 背後から覗き込みながら声をかければ、は目を丸くしながら振り向いた。



 クリスマスプレゼント 〜仁王編〜



 まだ誰も戻っとらん部屋のコタツにもぐりこんだあとも、は飽きずにヒヨコの腹を押している。

「ピヨッ」
「ピヨッ」
「似てないよ、仁王」
「さっきお前さんがオレみたいじゃ、って言うたぜよ?」

 詐欺師のオレも、無機質の真似はむずかしいのう。
 さっくりと言い放つは、変わらずヒヨコに夢中らしい。

 オレは頬杖をつきながら、飽きもせずにヒヨコを鳴かしているを黙って見ていた。

 しばらくしてようやく満足したのか、がヒヨコを膝の上に抱きかかえるように抱きなおして、首を傾げながらオレを見上げた。

「でもこれ、真田とか柳が見つけてたらどうする気だったの?」
「元々男とプレゼント交換なんてする気なかったぜよ」
「じゃあ私が見つけてよかったね?」
「プリッ」

 うそぶくように言えば、全く気にも留めずに笑う。
 コイツは本当によくわからん女じゃ。

「あ、そういえば仁王はプレゼント見つけたの?」
「ああ。隣の部屋の襖と襖の間でな」
「え!? うそ、絶対見つからないと思ったのに!」
「なんじゃ。これはが隠したんか?」

 あんなひねた隠し場所、参謀か幸村かどちらかだと思っとったが。
 目の高さで白い不織布の包みを揺らして見せれば、は残念そうに眉根を寄せて口をとがらせた。

「そんな怖い顔しなさんな。開けてもええか?」
「あ、うん。開けて開けて!」

 そしてころっと笑顔に変わる。
 ときどき思うが、はオレよりもペテン師の素質があるんじゃなかろうかと。
 取り繕った上辺よりも、馬鹿正直な純粋さのほうが人を信用させるもんかと。
 あの幸村と柳を手懐けているくらいじゃからのう。

 ま、オレにはどだい無理な話じゃが。

 自分が包んだプレゼントだというのに、は目をきらきらさせてオレの手元を見つめている。
 少し意地悪く、わざとゆっくり包みを開けてみれば、中から出てきたのは。

「……なんじゃ? 靴ヒモか?」
「えーっと、ミサンガです……」

 親指と人差し指で摘み上げたソレは、が言うミサンガにしては異様に長い、赤と芥子色と白の紐で編まれたもの。

 いやこれ、どうみても靴ヒモぜよ? しかも片っぽだけ。

「あはは……実は編んでる最中にドラマの最終回に夢中になっちゃって。無意識に手だけ動かしてたらそんなに長くなっちゃったんだ」
「手元を見んでこれだけ編めることを褒めればええかの?」
「うんうん」

 照れ臭そうに笑い続ける。
 ま、長さの理由はよくわかった。

「でもそれじゃ腕に巻いても抜けちゃうよね」
「荷ヒモにしては短すぎるしのう」
「……使い道ないね」

 はぁ、と。
 今度は一転して、ため息をついて肩を落とす。

 おもしろいヤツだな、本当に。

「そかそか。ま、気を落とさんでもちゃんと使い道はあるぜよ」

 オレはまだ片付けていなかった鍋道具の中から料理バサミを取り出す。
 そしてそれで靴ヒモミサンガをちょうど二つに切り離した。

「仁王……それ野菜切る用のハサミだよ?」
「真田には黙っとれよ? どれ、腕貸しんしゃい」
「え?」

 呆れたように呟いたあと、は首を傾げる。
 オレはコタツ布団のしたにもぐっていたの左腕を掴んで、袖を少しだけ捲り上げた。

 そしてその手首に、半分にしたミサンガの片方を結びつける。

「ほれ。ソッチの結んでくれるか」
「あ、うん」

 袖を元に戻してから、今度はオレの左腕をの前に突き出す。

 しばらくはきょとんとしてオレの左腕を見つめ、やがてオレの顔を見上げて首を傾げた。
 オレはにやりと笑って、右腕で頬杖をつく。

「ミサンガじゃなかと?」
「そうだけど」
「だったら結んでくれんか? 自分じゃ腕に巻けん」
「あ、そっか」

 こくんと頷いて。
 袖口をぐいっと捲くったあと、は器用に手早く残り半分のミサンガをオレの左腕に結びつけた。

「できたよ」
「ああ、これでよか」

 オレは自分で袖を元に戻し、ミサンガが結ばれているあたりの手首をさする。

「多少不恰好じゃが、これならええじゃろ?」
「うん」

 再びはこくんと頷いて。

 だが次の瞬間、はにかんだ笑顔を満面に浮かべた。

「ありがと、仁王」

 ……その笑顔は、反則じゃろ?

「あー、よかよか。くれぐれも、幸村や参謀には見つからんようにな?」
「うん!」

 勢いよくが頷いた瞬間、膝の上のヒヨコがオレの代わりに「ピヨッ」と鳴いた。 

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