「なんだろーなコレ」

 隣の部屋のタンスの裏で見つけたぺらぺらの白い封筒をひらひらさせながら、幸村くんの言ったとおりコタツの部屋に戻ったオレ。
 すると、がオレが隠したプレゼントを見つける瞬間を目撃した。

「おーが見つけたのか?」
「これ丸井の? ミカンの下に隠すなんて丸井らしいね」

 オレが見つけたのと同じようにぺらぺらの封筒をひらひらさせながら、はこっちを振り向いた。



 クリスマスプレゼント 〜丸井編〜



「みんなまだ戻ってきてないけど、開けてもいいかなぁ?」
「いいんじゃねぇ? つーかミカン食ってもいいよな?」
「それは真田に聞いてよ」

 並んでコタツにもぐりこんで、は封筒をぺりぺりと開けて、オレはみかんをむきむきと剥く。
 綺麗に剥き終わって、半分を一気に口に入れた瞬間だ。

「あ! グランパシフィック横浜のランチバイキング招待券!」
「もふっ! もほふぉふあんひふぁいひんふ、めひゃふひゃふめーひょ!」
「だよね! いっぺん行ってみたかったんだー!」

 って今のわかったのかよ! ……ってジャッカルみたいなツッコミいれちまったじゃねーか!
 オレはミカンを飲み込んで、にこにこと嬉しそうに招待券に見入ってるを見た。

「ま、こういうのは食べる喜びを知ってるヤツに当たって欲しかったから、が見つけてくれてよかったぜ」
「うん、ありがとう! でもこれ、丸井は行かなくてもいいの?」
「オレそこ出入り禁止になってるし」
「あー」

 笑顔はそのままに言葉を切るのは、お得意の誤魔化し方だ。

「そこのバイキングも食べつくしちゃったんだ?」
「つーかバイキングなんだから、食べつくしたくらいで文句言うなっつーんだよな」
「そういえば、夏に一緒にケーキバイキング行ったときも出入り禁止になっちゃったよね」
「ひでーと思うだろぃ? ま、神奈川のホテルが全部駄目になったら東京まで行ってやるけどな」
「あはは、丸井らしい」

 2個目のミカンを剥き始めると、も手を伸ばしてきた。
 ちっけぇくせによく食うヤツだよな、コイツも。

 しばらく二人でもぐもぐと無言でミカンを食ってたけど、なかなか皆が帰ってこない。
 さすがのオレも最後の1個には手を出さずにいようと思ってたけど、これじゃ間が持たねぇっつーの。

「オレもプレゼント開けてみるかな」
「……あれ? それ私が隠したプレゼントだよ」
「へ? なんだよ、オレたち二人でプレゼント交換したのか?」

 くしゃっとポケットにつっこんでいた封筒を取り出せば、コタツの布団を肩までひっぱりあげてたが首を傾げた。
 そして、ぱっと顔を輝かせる。

「よかった、丸井が見つけてくれて」
「お! もしかして食い物か!?」
「食べ物じゃないけど、食べ物と交換できるものだよ」

 それを早く言えって!
 オレはクリスマスカラーの封筒をばりばりと破いて、中身を取り出した。
 出てきたのはじゃばら折りの……なんだ?

「回数券? ……これ学校向かいの定食屋の日替わり定食回数券じゃん!」
「そうそう。夏の間部活帰りに毎日のように寄ってたら、お店の人がくれたんだ」
「あー、真田が寄り道するなどたるんどるっ! て叫んでたアレな」
「そうそう。たるんどるっ!」
「似てんじゃん! たるんどるっ!」
「あはは、うまいうまい」

 ……って真田のモノマネ大会してんじゃなくてよ。

「これ柳や仁王に当たってたらどうする気だったんだよ……。つーか、オレここも出入り禁止」
「えぇえ? ここも?」
「前にここで、赤也と一緒にジャッカルにたかってたら、店の親父にめちゃくちゃ怒られてよ」
「そうだ。そこのオジサン、ジャッカルのことすーっごく可愛がってるんだっけ」

 別にジャッカルはブラジル移民でも貧乏苦学生でもねぇっつーのに、見た目の印象だけでヒイキしやがるんだよな、あの親父……。まぁジャッカルがいいヤツだってことには変わりねーけどさ。
 あン時はマジで真田の鉄拳制裁より怖かった。

 だからこの回数券はオレが見つけてもまったくの無価値の紙ってわけだ。

「うーん……仕方ないなあ」

 すると、眉根を寄せてうんうん唸っていたが小さくため息をつきながらオレを見た。

「じゃあその回数券持ってきたら、うちで同じメニューごちそうしてあげるよ。プレゼント無しってわけにもいかないし」
「マジで!? いいのかよ!?」
「うん。あ、でも前もって連絡してね? 材料揃えなきゃならないし」
「わかってるって! やった!」

 オレは思わずの手を取って、その手をぶんぶんと振った。
 出入り禁止になったとはいえ、あそこの定食うまかったんだよな! も料理はうまいし、願ったり叶ったりだぜぃ!

「じゃあ明日! 明日の部活のあと!」
「うぇえ、明日?? い、いいけどさ」
「よーっし! 明日の部活がんばるぞー!」

 両手でガッツポーズを決めて、ついでに最後のミカンに手を伸ばして。
 明日の部活終了後に意識を飛ばしながら、オレはとミカンを半分コした。



 ところが。

さん、それじゃあ買出しに行こうか?」
「え?」
「今日はの家で夕食を食べるのだろう? 荷物持ちは任せろ」
「ええ? なんで幸村と柳が?」

 翌日の部活終了後。
 部誌の記入やら着替えやらでいつも最後になるを、全員で校門で待ち伏せて。
 きょとんとしたは、当然オレを見るけど。

「あ、あー、あの券8枚あったしよ。メシは大勢で食ったほうが楽しいし美味いだろぃ?」
「あ、なんだそういうこと? いいよ、それじゃみんなで買出しに行こう!」

 オレの引きつった笑顔には疑問も感じなかったのか、は幸村くんと柳に両脇挟まれてさっさと歩いていく。

 って、はぁあ〜……。
 がっくりと肩を落として大きくため息をついたオレに、慰めるように肩を叩いたのはジャッカルだ。

「ま、まぁ元気だせよ……。没収されなかっただけ、よかったと思うぜ?」
「あぁ〜、幸村くんにバレたのが運のつきだったぜ……」
「詰めが甘いんじゃよ、お前さんは」
「うむ……幸村の目の前での手を取って喜ぶというのは、浅はかだったな」

 ジャッカルだけじゃなくて、仁王や真田にまで慰められてるよ、オレ!

 一人にししと笑ってる赤也のケツを蹴り上げて、オレは肩を落としたままみんなでの家に向かうのだった……って、納得いかねぇぇ!!!

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