「出たなデビル赤也め! おとなしくオレたちリボン隊に投降しろぃ!」
「はぁ!? ちょ、なんなんスかアンタたち! なんでいきなり羽交い絞めされなきゃなんないんスか!」
「今だ隊員! ワカメにリボンをつけろ!」
「了解、丸井隊員! えーい、頭のてっぺんから編みこんでやるー」
「なんなんスか一体ーっ!!」



 21.なかよしりぼん:中編



「はい、チーズ」

 ぷしっ

 携帯カメラのシャッター音が響き、画像を確認したはニンマリと笑う。

「力作!」
「おっ、綺麗に撮れてんじゃん!」

 にこにこしながら携帯の画面をオレにつきつける
 赤也の首を片手でホールドしながら覗き込めば、そこには赤いリボンを頭のてっぺんから編みこまれた赤也が不本意そうに写ってた。

「ぎゃはは! スッゲーダセェ!」
「つーか何写メ撮ってんスか! 大体、先輩はともかくっ、なんで丸井先輩までリボンつけてんスか?」
「可愛いは正義だからだ」
「だからだ!」
「意味わかんねーし……」

 と一緒にシクヨロポーズをしてやっても、赤也は不満そうにオレたちを見てた。
 ま、昼休みに2年のフロアをうろついてたお前が悪い!

 柳司令の『真田リボン写メ計画』を託されたオレたちは、まずは協力的と思われる幸村隊員か仁王隊員を捕まえに行こうとしたんだけど、そこをたまたまあくびしながら通りかかったのがデビル赤也だった、ってわけだ。
 オレとは即目標変更して赤也に飛び掛り、無事に第一任務を遂行したのだ!

「赤也はどこか行くところだったの?」
「弁当食い足りなくてちょっと購買にパン買いに行こうと思ってたんスよ」
「そっか。ねぇ、その前にちょっと私たちに協力しない?」
「は? 協力?」

 のほほん笑顔のの真意を探るように、赤也が眉をひそめた。……でも頭の編みこみリボンのせいで真剣味が半減だ。

「テニス部レギュラー全員のリボン写メ集めてるんだよ。最終目標は真田のリボン写メ!」
「真田副部長の!? アンタ、命知らずもいいとこだなホント……」
「だろぃ? だから人手がいるんだよ。さすがにオレ1人じゃ真田押さえこめねぇし」
「いやですよ! そりゃ確かに見てみてーけど、先輩たちはともかくオレ確実に殴られるし!」

 ぶんぶんと頭を振って、ついでに真田の怒髪天を衝くサマでも想像してるのか、赤也がどんどん青ざめてく。

「んだよ、いまさら1発2発殴られたってそれ以上馬鹿になりようねぇだろぃ?」
「……ゼッテー協力しねぇ。今の一言でそう決めた」
「んだとー!? 赤也のクセに生意気だぞ!」
「ジャイアンかよ! とにかくゼッテー協力なんてしないっすからね!」

 後輩のくせに先輩の頼みを断るたぁいい度胸だ!
 きょとんとしてるを尻目に、オレたちは大声で罵りながらつかみかかって……

「こら二人とも。廊下でそんな大声出すものじゃないよ」

 穏やかで涼しげな声が、オレたちの動きを止める。
 幸村くんだ。

 オレたちが騒いでいたのがちょうど幸村くんのクラスの前だったから、たまりかねて注意に出てきたみたいだ。
 微笑んでるけど、小さな子供を叱るみたいに少しだけ眉をしかめてる。
 でもすぐにオレたち3人を見回して、あれ? という風に首を傾げた。

「ちょ、幸村部長っ! 助けてくださいよ!」
「幸村くんも、赤也に先輩命令はちゃんと聞くように言ってくれよ!」

 オレと赤也は幸村くんに駆け寄って手助けを求めたんだけど。

「やぁさん。めずらしいね、リボンなんてつけて。すごく可愛いよ。よく似合ってる」
「ありがと、幸村」

「……話しかけてるオレたちはスルーっすか……」
「うんまぁ……幸村くんって爽やかに冷たいからな……」

 訴えかけてるオレたちの目の前を素通りしてに話しかけた幸村くん。オレと赤也は毒気を抜かれて、お互いつかみ合ってた制服を離した。

「ブン太と赤也もリボンつけてるみたいだけど、もしかして何かの罰ゲーム?」
「罰ゲームじゃないけど、まぁちょっとしたファンサービスっていうか」

 オレとで幸村くんに説明する。
 ほんの弾みでテニス部レギュラー全員のリボン写メを撮らなきゃいけなくなったこと、最終目的は真田だということ。
 しばらく黙ってオレたちの説明を聞いていた幸村くんは、真田にもリボンを結ぶというところでぷっと吹き出した。

「本気かい? それは骨が折れるだろうね」
「だから仲間集めも兼ねて他のヤツから結びまくってんだよ」
「なるほどね。それで赤也は早速餌食になったってわけだ?」
「なんか髪と一緒にすんげぇ複雑に結ばれて、取れないんスよコレ……」

 赤也のヤツはまだ不服そうに赤いリボンの編みこまれたちょんまげをいじってる。

「それでさん。オレもリボンをつけられちゃうのかな」
「そうそう! 幸村にはこのリボンだよ」

 苦笑しながら幸村くんがを見下ろせば、はにこにこしながら淡い空色のリボンを取り出した。幅5ミリくらいの、繊細な感じのリボンが2本。

「つけていい?」

 邪気のない顔で首を傾げながら問うだけど、幸村くんがのお願いを断るなんてことあるわけねーし。

「もちろん。できればさんとお揃いの髪型がいいな」
「あ、可愛いかも! じゃあしゃがんでしゃがんでっ」

 笑顔の二つ返事で、幸村くんは壁際にしゃがみこんだ。ウキウキと幸村くんの髪を二つくくりにしだしたの正面に、オレと赤也もしゃがみこむ。

「他に誰かリボンつけた先輩いるんスか?」
「さっき柳が白いレースのリボン頭に結んだんだぜ。っ、携帯借りるぞ」
「柳先輩が!? ……ブッ!! ま、マジでリボンつけてるし! あの柳先輩が!」
「あ、オレも見たいな、柳のリボン写メ。ブン太、画面こっちに向けてよ」

 の携帯画面に呼び出された柳のリボン写メには、笑っちゃ悪いと思ったらしい幸村くんもたまらず頬をぶふっと膨らませて噴出した。今頃くしゃみしてんだろうなぁ、柳のヤツ。
 幸村くんはくつくつと肩を震わせて笑いを耐えながら、携帯をに返して目尻にたまった笑い涙も拭わずにオレを見た。

「真田にはどうやってリボンをつけるつもり? ただでさえリボンは校則違反だし、オレが言ったって断固拒否すると思うんだけど」
「そこは力技で攻めるしかねぇだろぃ? とりあえず全員で真田を押さえ込んでる内にがリボンを結んで、すかさずオレが写メるから」
「その後はどうすんスか……?」
「赤也を人身御供にして逃げる」
「ありえねぇ!!」

 生意気にも先輩の腕にパンチを入れてきた赤也。オレはそれを華麗によけて、逆に赤いリボンのからんだちょんまげを引っ張ってやる。

「いてて! 何すんスか!」
「生意気な後輩に教育的指導だっつーの!」
「それなら先輩らしくしろよな!」
「赤也とブン太って仲いいよねぇ」
「きっと精神構造が似てるんだろうね」
「「似てねぇ!!」」

 100歩譲ったとしても、こんなバカ也と同じ頭してるなんて言われたくねー!
 でもそれは赤也のほうも同じだったらしく(失礼なヤツだな!)、オレと赤也が幸村くんを振り向きざま叫んだ言葉は同じものだった。

 けど、その後が続かない。

 なぜなら!

「できた! 幸村可愛いよ!」

 もう満面の笑顔でコームを握り締めながらガッツポーズしてるの、横。
 にこにこと穏やかな笑顔を浮かべてる幸村くんの頭は、両サイドの髪をゆるくリボンでくくられていた。

「「「…………」」」

 オレも赤也も、ついでに言うなら廊下を歩いてた通りすがりのヤツらまでもがあんぐりと口を開けて幸村くんに見入ってた。
 いや、その。オレ、さっき自分のリボン姿見て我ながら似合うんじゃね? なんて思ったけどさ……。

 自分、自惚れてましたッ!
 幸村くんのリボンの似合いっぷりは、半端ねぇ!!

「すげぇ……さすが幸村部長……」
「ふふ、それって褒め言葉のつもりかい? 赤也」
「一応そうなんスけど……。いや、褒めてるのかどうか、自分でもわかんねぇッス」

 赤也の混乱してる気持ちがよくわかる。
 幸村くん本人はから手渡された鏡で自分を見ながら「やっぱり恥ずかしいね」なんて言ってるけどさ。
 背後で女子が、きゃぁぁ幸村くん可愛い写メ写メ! とかってスンゲー騒いでるぞ。オレと赤也の喧嘩を収めに来た幸村くんが騒ぎ大きくしてんじゃんっ。

「赤也、写メ撮って! 幸村、シクヨロポーズね?」
「うん、わかった」

 そして幸村くんはと一緒にぱちりと写真に納まって。
 と、そこに。

「ほうほう、おもろいことやっとるのう」
「いってぇ!」

 携帯カメラマンをやっていた赤也のちょんまげを、背後から忍び寄るなりぎゅむっ! と掴みあげたのは。

「あ、仁王! ちょうどいいトコに来たな!」
「あんまりいい所とは思えんがな。なにしとるんじゃ?」
「それより髪引っ張んないでくださいよ! 抜ける! 抜ける!」

 仁王だ。腕を振り回して抗議する赤也をひょいっと避けて、仁王は楽しそうに幸村くんとを交互に見た。

「リボンひとつで随分印象が変わるもんじゃな。似合っとるぞ、。ん? 幸村とアイドルユニットでも組むんか?」
「ユニット組むのは幸村だけじゃなくて、レギュラー全員とだよ」
「そういうこと。ねぇさん、仁王はどんなリボンをつけるつもり?」
「……やっぱりオレもつけられてしまうんか?」

 ちらりと横目で仁王がオレを見たから、簡単に事情を説明してやる。
 といっても、仁王は空気を読むのがうまいから真田リボンの最終計画だけを説明したんだけどな。
 てっきり嫌がるかなと思ったけど、真田にリボンをつけるという趣旨には幸村くんと同じように噴出して、仁王はくるりとに背を向けて廊下に座り込む。

「オレも一口乗るぜよ。真田の間抜け面を拝む一生に一度の機会かもしれんからのう」
「間抜け面って、ひどいなぁ仁王」
「まぁまぁ。ほれ、好きにしんしゃい。幸村みたいなツインテールでも丸井みたいな柔ちゃんヘアでもなんでもええよ」

 あっさりと次のターゲットを確保できたは、にこにこしながら仁王の髪をコームで梳いていく。もともと尻尾のある仁王だけど、どんな風にするんだろうな?

「なんで仁王先輩、そんなあっさり受け入れられるんスか……信じらんねぇ」
「権力っちゅうモンには巻かれてみたり歯向かってみたり、緩急必要ぜよ。赤也にはちと早い話かもしれんがな」
「ちぇっ」

 にやにやと笑う仁王に簡単にあしらわれて、赤也は口を尖らせて不貞腐れた。

 すると、

「君たち! 廊下に座り込むのはやめたまえ」
「おっ、今度は柳生じゃん」

 凛とした声が響いてきたかと思えば、カツカツと神経質そうな足音と共に登場した柳生。まぁこんだけ騒ぎになってりゃ風紀委員も出てくるよなぁ。
 次から次へと、オレとしては探しに行く手間がはぶけてラッキーだぜ。

「丸井くん、一体何を……仁王くんに切原くん、幸村くんまで? さんも一緒なんですか」

 壁際にヤンキー座りして集まってる様子は、誰が見たって柄の悪い集会にしか見えないだろうし、柳生のしかめっ面も理解はできる。……理解するだけだぞ。改めはしない。
 柳生は眉根を寄せながら眼鏡をくいっと持ち上げ、楽しそうに仁王の髪を編んでいるの隣までやってきた。

さん、あなたらしくもない。リボンは校則で禁止されていること、ご存知でしょう?」
「お前さんも固いのう。女子がリボンつけとるのに、他に言うことないんかい」
「似合っていることと校則を破ることは別物です、仁王くん」

 仁王の軽口もぴしゃりと切り捨てる柳生。
 は器用に仁王の髪を結いながらも、視線を柳生へと向ける。

「休み時間の間だけも駄目?」
「個人的な心情としては見逃して差し上げたいところですが、それをしてしまうとキリがありませんからね。規則は規則です」
「えー」
「まぁまぁ柳生、とりあえず仁王の写メ撮るまでは見逃してよ。せっかくさ、ほら、さんがこんなにがんばってるんだし」

 不服そうに眉根を寄せたを弁護するように、幸村くんがやんわりと口を挟んだ。
 柳生が「仁王くんの写真?」と言いながら視線をずらせば、が仁王の髪に真っ青なリボンをきゅっと結びつけたところだった。

「できた!」
「尻尾が増えたね、仁王」
「プリッ」

 仁王が肩をすくめると、2本に増えたおさげが揺れた。
 なんつーかオッサンが想像する女子中学生の基本ヘアスタイルというか。耳下から編まれた細い三つ編みが、仁王の硬い髪質のせいかくるんと跳ねてるのがまた絶妙でウケる!

「……でもなんか、違和感ないっすね」
「1本が2本に増えただけだもんなぁ。ま、とりあえず写メるぞー」

 ノリよくシクヨロポーズを決めた仁王と、ついでに幸村くんもがぎゅっと固まってカメラに収まる。
 そのまま女子みたいにきゃっきゃと保存した画像を覗き込んでははしゃいでるたちだったんだけど……。

「さぁ、もう用事は済んだでしょう? みなさんリボンを外してください」

 ぱんぱんと手を叩いて柳生が校則遵守を促した。途端に不服そうに口を尖らせるのは仁王と。赤也は柳生に言われるまでもなくさっきからリボンをほどこうと苦戦してっけど、なかなかほどけないみたいだ。

「柳生の鬼ー。まだレギュラー全員分撮り終わってないのにー」
「そうじゃそうじゃ。あんまり横暴が過ぎると、明日からお前さんの姿で女子の制服着るぜよ」
「意味のない抵抗はやめてください。特に仁王くんっ」

 柳生の女子制服姿という言葉に再びの目が輝きだしたのを見て、慌てて柳生が仁王を阻止しようとしてっけど。
 オレは隣で薄い笑みを浮かべたまま3人を眺めてる幸村くんをちらっと見上げた。

「幸村くん、ここで真田リボン写メ作戦の練習してみるっていうのもありじゃねぇ?」
「奇遇だね、ブン太。オレも今同じこと考えてたよ」

 にっこりとオレに向かって微笑み返した幸村くんの笑顔はまさに天使そのものだったんだけど、こういう笑顔を浮かべてる時こそ何かを企んでいることが多い。
 で、その企みはどうやらオレの考えと一致してるみたいだ。

 というわけで。
 すっくと幸村くんが立ち上がったかと思えば、ビシッ! と人差し指を柳生につきつけて、

「ブン太、赤也! 柳生を拘束するんだ!」
「イエッサー、幸村隊長!」
「へ? な、なんすかいきなり!?」
「いいから柳生を拘束するんだよ、ちょんまげワカメ!」

 オレは未だに頭のリボンと格闘してた赤也の首根っこを掴んで、柳生に向かって思いっきり突き飛ばした!
 と仁王に説教してた柳生は完全に虚を衝かれた形で、特攻していった赤也にぎょっとしながらも寸ででよける。

「切原くん! 廊下で暴れるのはやめたまえ!」
「だーもー! なんでアッチからもコッチからも怒られなきゃなんねーんだよ! くっそ、さっさと終わらせてやるっ!」

 顔をしかめながら説教の矛先を赤也に変えた柳生。でも赤也は散々オレたちに振り回されたことに軽くキレたのか、柳生の静止も聞かずにむんずとその左腕を拘束した。キレても幸村くんの命令だけはちゃんと聞くってところがテニス部レギュラーだよな。うん。

「は、離したまえ! なにをするんですか!」
「しょうがねぇだろぃ? 柳生が全然協力してくんねぇからさ」
「ほれほれ、頭下げんしゃい。の手が届かんじゃろ」
「ぐっ! に、仁王くんっ!」

 赤也とは反対の右腕を抱きかかえるようにして拘束したオレに、背中からのしかかって柳生に前傾姿勢をとらせる仁王。
 よしよし、連携はばっちりだな! あとはこれが筋肉バカの真田にも通じるかどうかってとこだけど。

「全く、動きが悪すぎるよ柳生? いくら多勢に無勢とはいえ、こんな簡単に拘束されちゃって」
「い、一体何をするつもりですか!?」
「何って、オレたち真田にリボンつけてみ隊だよ? 決まってるじゃないか。ね、さん」

 魔王の笑みを浮かべながら幸村くんが柳生の目の前に仁王立ち。哀れ捕らわれの身となった柳生はたらたらと冷や汗を流しながらも抵抗を試みるけど、まぁ3人に押さえ込まれちゃいくらなんでも逃げ出すのは無理だろぃ。

 そして、にっこにこと幸せそうな笑顔で近づいてくる
 その手には、まるでキティちゃんかドラミちゃんかというような形に結ばれた広幅の真っ赤なリボン。

「ま、待ってくださいさんっ! 私は風紀委員として校則違反をするわけにはいかないのです!」
「ってことは、柳生はリボンつけたらもう風紀委員じゃなくなるの?」
「そりゃあええこと聞いたのう。、リボンをつけた柳生は真田拘束に一肌脱いでくれるらしいぞ」
「ホントに!?」
「そんなことは言っていません!」

 往生際悪くぶんぶんと頭を振って否定する柳生だけど、仁王の口車に乗ったの目の輝きはこれっぽっちもかすまない。
 最後には幸村くんが笑顔のまま片手で柳生の頭を押さえ込み、その後頭部にがすかさずあの特大リボンをぎゅむっ! とくくりつけた。

「よっしゃ! これで柳生もオレたちの仲間だな!」
「く……屈辱です……ッ!」

 ガッツポーズとハイタッチ。盛り上がるオレと仁王との目の前で、柳生はそのままがっくりと膝をついて頭をたれた。大げさなヤツだな。

「柳生、顔上げんしゃい。写メ撮れんじゃろ?」
「に、に、に、仁王くんっ! 私はっ、こんな状態で写真など……!」

 がしっと柳生の肩に腕を回してしゃがみこんだ仁王。すると柳生は顔中真っ赤にして仁王を睨みあげた。
 その瞬間、ようやくあらわになるリボン柳生の全貌。

「……」
「……」
「……」
「……」
「柳生、可愛いよ?」

 最後のの言葉には誰も同意しなかった。

 いや、ほら。直前まで違和感ない仁王とか、超似合いまくってる幸村くんとか見てたせいかもしれないけどさ。
 頭のてっぺんにでっかいリボンをくっつけた柳生は、キキとムスカを足して割ったようなジブリワールド状態になってて。

 正直、悪い。すっげー笑える!

「ぎゃっはっはっはっは! す、すっげー似合わねぇ!!」
「やぎゅっ、柳生先輩っ、ぶふっ……! 駄目だ、腹痛ぇ!」

 オレと赤也は遠慮なく腹を抱えながら廊下を転げまくり、幸村くんも横を向いて噴出すのを必死に堪えてる。仁王は腹抱えてしゃがみこんでるけど、肩がもう痙攣おこしてんのかってくらいに震えてるし。ほら、廊下歩いてるヤツだってみんな噴いてるし!
 だけだ。いつもと同じにこにこのほほん笑顔で写メ撮ってんの。

「これで柳生もリボン隊の一員だね!」
「こんだけ集ればラスボス・真田もイケルんじゃねぇ!? 幸村くんっ、A組に突撃しようぜ!」
「ふふ、そうだね。そろそろ昼休みも終わっちゃうし、時は満ちたかな」

 未だ廊下に四つん這いになって落ち込んでる柳生以外は、全員がノリノリで幸村くんの言葉を待ってる。
 そして幸村くんはその天使のような顔にニヤリと悪い笑みを浮かべて、ビシッ! とA組の方向を指した。

「オレたちの勝利に死角はない! リボン隊総員、真田確保へと向かえ!」
「「「イエッサー!!」」」

 オレたちは全員直立不動で幸村くんに敬礼して。
 あんなにリボンをウザがってた赤也も最後まで抵抗していた柳生も。結局は幸村くんのことばに半ば自棄になりながら返事して。

 いよいよオレたちリボン隊は、立海のラスボス・真田の元へと向かうのだった!



 続くっ!

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