、志波やんに活躍してもろて3−B優勝したいやろ?」
「そりゃもちろん」
「ではさん、決勝戦前にこちらの衣装に着替えてください」
「……は?」


 45.3年目:体育祭 VSI組編


 混合リレーを終えて現在グラウンドは最終競技棒倒し2回戦に向けての整備中。
 初戦相手のA組には、応援のしがいもなくあっさりと勝利。
 なんかもっとこう、血沸き肉踊るっていうようなの期待してたのに。

 で、現在はクラス席の後ろで念入りにストレッチをしている男子に対し、女子はなにやら藤堂を中心に何かを配布している。

 そんな中で私のもとにやってきたのははるひと小野田。
 差し出されたそれは白い布。……ってこれ。

「なにこれ。さっき着た女神の衣装じゃん」
「そや。さっき手芸部にちゃっちゃっと手直ししてもろた。アンタ、棒倒しの最中それ着て応援せえ!」
「はあ? やだよメンドクサイ」
「ダメです! 男子のモチベーションを少しでも上げるために女子も協力するんです!」

 その方向性が微妙なノリはどうにかなんないのか。

「他の女子はチア部に借りたコスチューム着んねん。竜子姐と若ちゃんは白と黒の学ラン! そんでもって勝利の女神! 完璧やろ!?」
「藤堂はともかく若先生が学ラン〜? それ無理あんじゃないの」
「やや、さんひどいです、先生だってまだまだナウでヤングなギャルの感性に対応できますよ?」
「その発言自体がすでにもう対応できてないって」

 もしかして女子が調達してたっていう必勝アイテムってこれか?
 私は畳まれた女神の衣装をつまみあげる。

 ぴろりん

 ……。

「はるひ」
「なんや?」
「この衣装、こんなんじゃなかった」
「だから言うたやん。手芸部に手直ししてもろたって」
「……へそ見える……」

 手渡された衣装は確かに応援合戦で着ていた衣装なんだけど、その改造度合いと言ったら。
 まず、ワンピースだったはずなのにセパレートになってた。
 上衣はチューブトップ型でへそが見える丈。
 スカート部分はローライズで、丈はフルレングスのまんまだけど左足モロ見えくらいのスリットが入ってた。

「……教頭の検閲通るのコレ」
「校則違反常習のさんの言葉とも思えませんね。決勝戦で着用予定ですから、止められる時間はないはずです」

 小野田も今日ばかりは優等生の看板下ろしてるし。

「着替えは決勝戦直前な? 頼んだで!」
「ちょ、まだやるって言ってない!」

 人の話を聞かずにはるひと小野田は女子の輪に戻ってしまう。
 ええ〜……こんな見世物みたいなことマジでやんの……。

「どうした」

 そこへ志波が。
 初戦ではその狂犬っぷりを発揮することなく勝ってしまったものだから、まだまだ余裕の表情だ。

「棒倒しの決勝でまた女神やれって言われた」
「……そうか」

 志波が私の手の中の衣装を見下ろす。

「どうせなら藤堂がやってた学ランがよかった。アレならカッコよかったのに」
「確かにな。……本当にやるのか?」
「うー。断っても多分はるひに無理矢理着替えさせられると思う……」
「……」

 志波の眉間の皺が深くなる。

「また他のヤツに晒すのか……」
「ちょ、晒すってなに。人を汚れみたいに」
「E組のヤツがまた喜ばなけりゃいいけどな」
「う。嫌なこと思い出させるなっ」
「……お前のああいう格好を見るのは、オレだけでいいんだ」

 ちっと舌打ちする志波。

 ちょっと待て、なんだその発言。

「エロ志波」
「言ってろ。……さっさと終わらせてやる」

 ぽす、と私の頭を大きな手で叩いて、志波はなにやらぶつぶつ言いながらストレッチに戻る。

 次の相手は厳正な抽選の結果、優勝候補のちょい悪クラス。シンが率いるI組だ。
 主に柔道部やラグビー部といった筋肉ダルマ系の暑苦しい男子が揃ってる強豪チーム。
 さっきからのしんたちも作戦を練ってる最中だけど、なんかいい案出たのかな。

「今回は守備に重点置いたほうがいいな。志波は防御にまわってくれ」
「わかった」
「攻めはオレ様と佐伯を中心に少数精鋭で行く。あっちのチームは攻撃主体だから出し抜ければ旗を奪うのは簡単だっつーのっ」
「あとはコッチが向こうの攻撃に耐え切ればええんやね?」
「問題は機動力バツグンのくんか……彼一人に翻弄される恐れがあるな」

 ストレッチをしながら会議に参加していた男子がうーんと唸る。

っ、シンの弱点ってねぇのかよ!」
「シンの弱点って。海野や水島あたりにエロいカッコさせてセクシーダンスでもさせれば? 多分一撃必殺」
「やや、多分くん以外の男子も一撃必殺だと思いますよ?」

 あ、そっか。
 ほのかに赤面した男子一同に対して若先生は大人の余裕だ。

 そこへ放送局のアナウンスが入る。
 いよいよ2回戦の始まりだ。

「よっし気合入れすっぞ! 円陣組め!」

 のしんの声に全員が集まる。
 ぐるっと円になって、隣のヤツと肩を組んで。

「いーかお前ら! 2回戦の相手は優勝候補筆頭のI組だ! 気合入れろよ!」
「「「おおし!!」」」
「狙うは優勝だけだ! 行くぞ!」
「「「オオーッ!!」」」

 ぐっと体を沈めて。
 声だしの気合入れをしたあと、男子は各々ハイタッチしたり拳をつきあわせたりしてグラウンド中央に向かっていった。

 対するI組も陣地に向かう。
 パッと見の体格差が結構あるんだけど、機動力ならこっちが上っぽい。
 初戦で攻撃陣に加わってた志波が守りに入るってことだけど……。

「よー針谷。うちの猛者どもがイケメンヤロウをぶっ潰す! って息巻いてっから気をつけろよ?」
「うっせぇ! 筋肉馬鹿どもに負けっかよ!」

 クラス代表ののしんとシンが中央でぱしっとお互いの手を叩き合せる。
 それからシンが、1,2年のクラス席をくるりと振り返って。

「野球部っ、どっち応援すりゃいいかわかってんなぁ!?」
「は、はいっ! 主将っ!!」
「……お前らそんなに千本ノックくらいたいか……?」
「うぐっ、し、志波先輩っ……!」

 って、そこでシンと志波で後輩脅してどーする。

「志波くん気合十分だね」
「あー、まぁシンには負けたくないだろうし」
、アンタは勿論志波やん応援するんやろ?」
「なんでシンを応援しなきゃなんないの」

 クラス席前列に身を乗り出してきた水樹とはるひにはさまれて、私は椅子に深く腰掛けたまま腕組みする。

『それでは棒倒し2回戦第一試合、3−B対3−I……』

 放送局のアナウンスが流れ、体育教師がピストルを天に向ける。

 いよいよだ。
 前列に並ぶ攻撃陣ののしんや佐伯がぐっと姿勢を低くする。

 パァン!

 そして、戦いの火蓋は切って落とされた!

「行くぞお前らっ! 守備は任せたっ!!」
「おうっ!!」

 3−Bの俊足機動部隊が一斉に3−Iの陣地目掛けて走る!
 対するI組は予想通り攻撃に重点を置いてきた。
 のしんたちが左右に分かれて相手の攻撃陣をかわして突っ込む中、向こうはラグビースタイルでスクラムを組んで突進してくる!

「っ、棒の支えを最小限にしてあっちのスクラムを抑えるぞ! 後ろの守備のヤツ前方にまわりこめ!」
「お、おうっ!」

 とっさに志波が判断して、地面に座り込んで棒を支えてるヤツ以外を前に集める。
 そして、I組の連中とぶつかった!

「うあっ!」
「くうっ!」

 激しい衝突!
 B組の棒が多少揺れるものの、そこは志波の判断が功をなして守備陣総崩れとまではいかなかった。

「守備を立て直せ!」
「ちっ、さすが勝己だな! よしっ、各個撃破にうつるぞ!」

 シンの号令でうちの棒を支えている連中を引き剥がしにかかるI組攻撃陣。
 でもそいつらに志波もクリスもくらいついてなんとか引き剥がしにかかる。

「志波っ、シンになんか負けるな!」
「ハリーも今のうちや! 攻めたれっ!」
「瑛くんがんばれーっ!!」

 隣ではるひと海野も声を張り上げる。

 ああクヤシイ。なんで男に生まれなかったんだろ。
 団体競技って苦手だったけど、棒倒しは本当に興奮する!

 うちの攻撃陣は少数ながらも動きの鈍い向こうの守備陣を翻弄しつつ、時折のしんと佐伯が棒にくらいつこうとしてる。
 氷上や他の男子はその二人の援護にまわりながら、守備陣を乱していた。

「針谷くん、こっちが手薄だ!」
「よっしナイス氷上!」
「ちっ、針谷を行かせるな!」
「こっち側に守備まわせ!」
「……ふっ、甘いぞ君たち! さぁ佐伯くん、今のうちに反対側からいきたまえ!」
「なにっ!?」
「まかせろ! たぁっ!」

 攻撃陣に大多数を割いてるI組は氷上の言葉に惑わされてあたふたしているうちに、佐伯が棒にくらいつくことに成功した!

「よっしゃ佐伯っ、そのままもぎ取れっ!」
「素晴らしい作戦です、氷上くん!」

 3−B女子チームも盛り上がる!

 でもB組守備陣も苦戦を強いられていた。

、飛びつけっ!」
「おうっ、まかせろ!」

 筋肉ダルマの自クラスラグビー部員の背中を蹴って、シンが棒にとびついた!
 うあ、アイツ身のこなしいいからな!

「お前らタックルかませ! オレに構わず棒を倒せ!」
「「「おう!」」」
「ちっ! クリス、シンをひきずり落とせ!」
「リョーカイっ!」
「迎撃部隊はひとりずつ奴らを引き剥がすぞ!」
「「「おおーっ!」」」

 試合はまさに五分と五分!

 そこへ。

「みんな! 朗報よ!」

 試合開始直前に姿を消していた水島と藤堂が息を切らせて戻ってきた。
 どこ行ってたんだろ?

「クラス割の都合上、向こうは男子がひとり多いのよ! チョビちゃんが気づいて、今私と竜子で運営委員のところに行ってきたの!」
「教頭の許可もぎ取ってきたよ。同人数じゃないとフェアじゃないだろ?」
「は? ……ってことは」

 クラスメイト全員が水島と藤堂を見てから、若先生に視線を移す。

「きゃあ、もしかして若サマ参戦!?」
「すごいすごい! 急いで若サマっ!」
「ややっ、先生棒倒しに参加できるんですか?」
「もう、うちの男っちゅうたら若ちゃんしかおらんやん!」

 目をぱちぱちと瞬かせて、若先生。
 きょとんとした顔が、水樹をはじめとした女子全員の期待の眼差しに、ぱっと輝く。

「よぅし、先生行ってきます!」
「がんばってくださいね、先生!」

 若先生はいつもの白ジャージを腕まくりして立ち上がって、水樹の頭をぽんぽんと撫でる。

「若先生ズルイ!」
「や、ごめんさん。先生抜け駆けしちゃいます!」

 ぱちんと似合いもしないウインクをして若先生は腕をぐるぐる回して。
 颯爽とグラウンドに飛び込んでいけば、全校中の女子から黄色い歓声が沸きあがる。
 うう〜っ、ズルイ若先生っ。私も試合に出たかったのにっ!

「げ、若王子先生!?」
「なんで先生が棒倒しに混ざるんだよ!?」
「人数調整です。えーと、先生どうやら守備に回ったほうがよさそうですね?」

 I組の棒に佐伯に続いてのしんもしがみつくことに成功して、若先生はぐらぐら揺れてるB組の棒の守備にまわる。

「反対側から棒を支える力が足りないです! こっちは志波くんと先生に任せて、3人反対側から支えてください!」
「さっすが化学教師! おいっ、若ちゃんの指示どおり動けっ!」

 うわ……若先生、演算能力ここで使うんだ!
 すごい! 傾きかけてた棒がまたしっかりと立った!

「先生すごいっ!」
「今のうちだよ、瑛くん!」

 後方の憂いがなくなり、のしんと佐伯がI組の棒を大きく揺さぶる。
 でもさすがに筋肉クラス、体重の比較的軽い佐伯とのしんの揺さぶりじゃなかなか棒も倒れない。
 氷上もなんとか突破口を開こうとしてるけど、ウェイト差がここにきて足ひっぱってる。

 さらに。

「よーし、もう1回っ!」
「「「せいやーっ!!」」」

 ドォンッ!

「っだぁっ!」
「いてぇっつーの!」

 I組攻撃陣は変わらず棒にしがみついてるシンの号令のもと、B組守備陣に何度もタックルかましていて。
 だめだ、あのままだったらあたり負けする!

「……こうなったら一か八かですっ。志波くんっ、攻撃に加わってください!」
「先生っ……でも、この状況で一人でも抜けたら」
「だから一か八かです。幸いI組の男子は体が大きいから上りやすいというこちら側の利点もありますっ……!」

 志波と若先生がなにか話してる。

「次のタックルを耐えた直後、攻撃陣に加わって旗を奪ってください! その次のタックルをくらうまでがリミットです!」
「……わかりましたっ!」

 志波が頷いた。

 そこへ間髪いれずに襲い来るI組タックル!

 ドォンっ!!

「うぁっ!」
「ちぃっ!」
「……志波くん、今です!」
「わかりました!」
「頼んだで、志波クン!」
「任せろ!」

 大きく揺らいだ棒を立て直してすぐに、志波が走り出す。

「やべっ……オイッ、誰か勝己を止めろ!」

 棒の上からシンが指示を出してももう遅い!

「志波やんが攻撃参加や!」
「氷上くんっ、志波くんに協力を!」

 試合に集中してる男子に代わって女子チームで作戦伝達だ。
 小野田の声に振り返った氷上が走ってくる志波を見つけ、大きく頷いた。

「針谷くん、佐伯くんっ! こちら側に向かって棒を倒してくれ!」
「おうっ! 行くぞ佐伯っ」
「わかった! せーのっ!」

 のしんと佐伯が声を揃えて、B組側へと振り子の要領で棒を揺らす!
 大きく傾ぐことはなかったものの、それでも3m上の地点から二人分の体重がかかれば棒は斜めに揺らぎ。

 そこに志波が走りこんできた!

「志波くん、いまだ!」
「サンキュ、氷上! はぁぁっ!!」

 志波がI組の棒支えの一人を踏み台にして、大きく手を伸ばしながらジャンプする!

 でも、それと同時についにタックルに耐えられなくなったB組の棒までもが倒れた!

「旗を奪えーっ!」
「アカン! 旗を守るんや!」

 倒れた棒の先で混戦状態になるB組陣地。

「志波っ、先に奪えーっ!!」

 のしんの声と私の声はほぼ同時。

 志波の右手はしっかりと棒の先端に届き、もぎ取るように旗を獲った!

 パンパァン!!

 試合終了のピストルが響く。
 B組の陣地を見れば、潰しあいになった人の山の上に這い出るようにして、シンがB組の旗を握ってた。

「どっちが先だった!?」
「わ、わかんない! 私、守備のほうしか見てなかったし!」
「アタシも攻撃陣しか見とらんかった!」

 3−B女子もざわつく。

『ただいまの競技結果をお知らせします……』

 アナウンスが響く。
 男子はグラウンドに座り込んだまま、女子は椅子から腰を浮かせたまま、体育祭本部に注目する。

 どっちだっ……!?

『棒倒し2回戦第一試合、3−B対3−Iの試合は、……B組の勝利です』

「やったぁぁぁっ!!」
「よっしゃ、決勝進出だ!」

 隣で固唾を呑んでた水樹と両手でハイタッチ!
 グラウンドでも、男子が拳を突き上げて喜びを爆発させていた。

「あぶねーっ! マジでギリだったな! 若王子采配の勝利だ!」
「そうだとも! さすが若王子先生!」
「志波もいい働きしたよな」
「ああ、サンキュ」
「若ちゃんセンセ、次は応援席から指示たのむで〜」
「はいはいっ、先生に任せちゃってください! えっへん!」

 全員顔も手足も体操着も泥だらけ。
 でもみんな笑顔で健闘を称えあってる。

 なんかいいな、アレ。

「ちっくしょ〜、絶対勝ったと思ったんだけどなー。混戦状態で審判見切れてなかったんじゃねぇの?」
「負け犬の遠吠えだな、シン! まぁ、I組の代わりにB組が優勝してやっからよ!」
「ちっ……。まぁいいか。針谷、がんばれよ!」
「おう! ナイスファイトだったぜ!」

 整列してのしんとシンが握手を交わす。

 そして、満身創痍で帰還してくる男子を、女子チームが大歓声でお出迎えだ。

「さぁさぁお疲れ男子諸君! 今の試合、めっちゃ疲れたやろ!? 先着順で白衣の天使・密っちとセイとあかりの手当てを受けられるで!」
「マジで!? やった、水島さんよろしく!」
「先着順かよ!? じゃあオレ水樹さんっ!」
「ややっ、水樹さんの手当ては先生が一番です!」

 手当てなんて必要ないじゃんってくらい元気な男どもが水島たちに群がって。

 私は遅れてゆっくり戻ってきた志波のところへ歩み寄った。

「お疲れ。いい試合だったじゃん」
「ああ。声聞こえた。サンキュ」
「ん」

 ぽす、と私の頭を叩いて、志波は手近な椅子に腰かける。

「怪我は?」
「してない」
「そっか」

 私も志波の横に座って、グラウンドを見た。

 2回戦第二試合がもうすぐ始まる。
 E組と、2年選抜の試合だ。

「決勝でE組とあたるのかな」
「……だろうな。2年選抜ごときに負けるチームにも見えねえ」

 混合リレーのあと、優勝の可能性のあるI組とE組のデータを小野田と氷上が分析してたんだけど、案外E組ってバランスのいいチームだった。
 I組のようなごり押しチームでも、B組のような素早さ重点のチームでもない。
 突出してるところがないかわりに、弱点もないチーム。

「勝てる?」
「……勝つ」
「うん」

 グラウンドを見つめる志波の目は、実にまっすぐだ。

「期待してる」
「まかせろ。……オレも期待してる」
「は? なにが?」
「……応援」

 あー……。

「エロ志波」
「言ってろ。……ていうかそんなにエロくもないだろ、あの衣装は。……肩が出てるくらいで」
「はるひに改造された」
「……は?」
「へそと足が見える」
「…………」

 あれ、志波の目が座った。

「……本当に着るのか」
「だからさっきも言ったじゃん。はるひに絶対着させられるって」
「……わかった。秒殺で片付けてやる」
「は?」

 なぜか志波の背中からにじみでる黒オーラ。
 なんなんだ。

 そのとき、グラウンドから試合終了を告げるピストルが鳴った。

「早っ! もう終わった!?」

 見ればE組のアイツが悠々と2年チームの旗を振っているところだった。
 つかほんと、なんでアイツあんな力あんのに正々堂々と戦おうとしなかったんだろ?

「決まったな」
「決勝戦だね」
「アイツには負けねぇ。絶対だ」

 なぜかはわかんないけど異様に闘志を燃やしてる志波。
 まぁ現状ではいいことなんだろうし、あえて突っ込まないけど。

「よしっ、お前ら休憩しながらでいいから作戦会議だ! 集まれ!」

 のしんが号令をかける。

「いくぞ」
「ん」

 私と志波も立ち上がり、最終決戦に向けての打ち合わせに参加することにした。

 いよいよだ。

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